近藤健介が“天才”の理由「同じはつまらない」…独自のデータ活用法「勝負にならない日こそ」

鹿児島県徳之島での自主トレで笑顔を見せる近藤健介【写真:長濱幸治】
鹿児島県徳之島での自主トレで笑顔を見せる近藤健介【写真:長濱幸治】

リハビリ中の昨年5月に伊藤大海と“対戦”

 鷹フルは2026年も近藤健介外野手の素顔に迫る企画をお届けします! 全4回にわたってお送りする単独インタビュー、第3回のテーマは「“近藤流”最先端データの活用法」についてです。ラプソードやiPitch、トラジェクトアークなど最新鋭の機器が登場する中で、どのようにデータと向き合うべきか――。そこには“天才打者”らしい考えがありました。

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 ソフトバンクの三笠杉彦GMは昨年12月、みずほPayPayドームにトラジェクトアークを増設することを明かした。現代野球に切り離せない存在となった最先端マシン。「僕は『何がいいか悪いかはやってみないとわからない』という考え方なので。とりあえずは流行に乗るっていう感じですね」。そう語った近藤の目には、未知の存在への“好奇心”で満ちているかのようだった。

 実際に腰の手術からの復帰が目前だった昨年5月下旬には、トラジェクトアークを使用していた。「(復帰予定の)最初の対戦が伊藤大海(日本ハム)だったので。打席に入ってボールは見ましたね」。一方でバットを振ることはなかった。そこには近藤らしい繊細な感覚が隠されていた。

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続きの内容は

常にアンテナを張る「天才打者」の哲学
苦しい時を乗り切るための「保険」の正体
調子に乗れない時こそ活きる「データ戦術」

「トラジェクトアークは見るだけですね。やっぱりマシンの伊藤大海と本物の伊藤大海を比べると、感覚やタイミングはちょっと違うので。あくまで目慣らしで使ってますね」

自主トレを行う近藤健介【写真:長濱幸治】
自主トレを行う近藤健介【写真:長濱幸治】

らしさ全開の野球観「つまらないじゃないですか」

 球界最強打者としての立ち位置を築き上げたのは、間違いなく“地道な練習”の積み重ねによるものだ。そのうえで、データの重要性についても柔軟に向き合っている。「例えば『こういう数値を上げたい』と思えば、やっぱりデータは見ますし、あとは自分の感覚でいい悪いを判断をします。『これは難しそうだな』と思ったら続けないですし」。

 続けて口にしたのは、近藤らしい野球観だった。「同じことをやっていてもつまらないじゃないですか。同じようにやっていたら同じように結果は出るかもしれないけど、『それって楽しいのかな』って思いますけどね。もちろん新たなことに挑戦してダメになることもあると思いますけど、そこは危機管理能力じゃないですか。流行りに乗ったり、アンテナを張っておくというのは大事なことかなと思います」。

 近藤の活躍を支えるのはチャレンジ精神だけではない。球団のアナリストには相手投手の傾向やデータを事細かに出してもらうよう依頼する。近藤は入念な準備を「保険」だと語る。

「本能のまま打ちにいく時もありますし、それで結果が出ることもありますけど。『きょうは無理そうだな』っていう時も当然あるので。そういう時は『このカウントでこのボールが来やすいから待っておこう』とか、そういう感じでデータは使いますね。全部を待って打てるのは、本当に調子がいい時なので。状態的に無理そうだなとか、相手ピッチャーが本当にいいなと思った時に、カウントや傾向で絞れたらある程度勝負はできる。調子によってはまるっきり勝負にならない時もあるので。そこの使い分けですね」

 打者が最先端のマシンで技術を磨くのと同時に、投手もすさまじい勢いでレベルアップが続いている。「行き当たりばったりで打てるピッチャーは少なくなってるのは間違いないですね」。好奇心と自らの感覚を正確にとらえる能力、そして苦しい時に勝負するためのデータ活用……。近藤健介が天才と称される理由は確かにあった。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)