2軍戦通算3打席で引退も「後悔ない」 加藤晴空と斉藤和巳監督の知られざる“絆”「角ハイ飲みたい」 

加藤晴空【写真:飯田航平】
加藤晴空【写真:飯田航平】

4年間のプロ人生「全力でした」

 たとえ試合に出られなくても、ベンチで誰よりも声を張り上げてチームを鼓舞した。「全力の野球人生でした」。ホークスでプレーした4年間を振り返ったのは、2025年限りで現役引退した加藤晴空3軍ブルペン捕手だった。

 見てくれている人は必ずいると信じて、気持ちを切らすことなく前を向き続けた。「後悔のないように全力でやろうと決めて。特に3年目以降は育成選手として“ラストチャンス”だと思って、より強い気持ちを持ってやってきました」。昨秋のフェニックス・リーグで指揮を執った斉藤和巳監督も、2025年に成長した選手として加藤の名前を挙げていた。

 だが、プロの世界は厳しかった。育成4年目の昨シーズンは3、4軍を主戦場とし、2軍戦の出場はわずか2試合。4年間を通しても2軍の舞台では出場3試合、計2打席にとどまった。「H」のランプを灯すことができないまま、2025年オフに戦力外通告を受けた。その3日後、加藤は関係者にあいさつするため、スーツ姿でタマスタ筑後を訪れた。指揮官として見守り続けてくれた斉藤監督と抱擁を交わし、“ラストメッセージ”を受け取った。

会員になると続きをご覧いただけます

続きの内容は

斉藤監督が加藤に贈った「最後の言葉」
支配下期限後、彼を救った「監督の秘話」
プロ初本塁打の裏にあった、監督との「絆の物語」

「『お疲れ様、本当にありがとう。頑張ったな』と声をかけてくださいました」

 斉藤監督は4軍監督時代から気にかけてくれていた存在だった。育成捕手の中でも出場機会は少なく、ベンチを温める日々が続いた。「僕が試合に出られない時、和巳さんは『きょうは出せなくてごめんな』と声をかけてくれたりもしました。僕の『試合に出たい』という気持ちも汲み取ってくれて」。その声に何度も励まされてきた。

 心が折れそうになった時も、救ってくれたのは指揮官の言葉だった。「3年目(2024年)の支配下登録期限(7月31日)が終わって、『もうダメかもしれない』と投げ出しそうになった時にも、前を向ける言葉をくれました。本当に感謝しています」。だからこそ、最後まで「もっと頑張ろう」と全力で駆け抜けることができた。

忘れられぬ“プロ初本塁打”

 プロ4年間でどうしても忘れられない一発がある。2025年9月9日に行われた宮崎サンシャインズとの4軍戦で放った“プロ初本塁打”。右翼席へと伸びていった打球を見届けた瞬間、両手を上げて喜びを爆発させた。

「高校時代にも打ったことがなくて。和巳さんにも『ホームランを打ちたいです』とずっと言っていたんです。一番に連絡をもらって。『おめでとう、練習の賜物やな』って。帰りのバスですぐにメッセージを送りました。『次は3軍でな』と言っていただいたのですが叶わなかったです」

 2026年から3軍ブルペン捕手を務める。「ピッチャーへの声かけやブルペンでの盛り上げとか、これまでも意識してやってきたことなので」。選手ではなくなっても、4年間貫いてきた姿勢は変わらない。「悔いなくやれたのは、素晴らしいスタッフの方々のおかげでもある。次は自分がそういう存在になりたいです」。

 最後に少し照れくさそうに話した。「和巳さんとは今年は軍が違うんですけど、いつもスタッフの方とご飯に行かれてたりするじゃないですか。僕もいつか一緒に角ハイ飲みたいです」。多くの人から愛された22歳――。第2の人生へ新たな一歩を踏み出した。

(森大樹 / Daiki Mori)