【連載・近藤健介】最強打者が挙げたV3の“絶対条件”…指揮官の言葉に共感した理由

球団として約60年ぶりに挑む“偉業”

 鷹フルが今シーズンお送りした人気連載「~極談~」。2025年のラストは近藤健介外野手を全4回にわたってお送りします。第1回のテーマは“リーグ3連覇への絶対条件”です。球団としては1964年~1966年に3連覇を果たした南海時代以来となる偉業に挑む2026年シーズン。天才打者が語ったのは、指揮官への「シンパシー」でした。

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 2年連続のパ・リーグ優勝、そして5年ぶりとなる日本一に輝いたホークス。来季も当然優勝候補の筆頭であることは間違いないが、近藤はあえて“警鐘”を鳴らした。「今年は1軍にいられなかった時期もありましたけど、チームの戦いを見ていても、やっぱり連覇っていうのは難しいなと思います」。

 今季は開幕直後に腰を手術し、その後も故障に悩まされる日々が続いた。ホークスに移籍して3年目にして初めて「無冠」に終わったが、チームは柳町達外野手や野村勇内野手を筆頭に“代役”が見事な働きを見せた。選手層の厚さを見せつけた1年にも映るが、近藤が口にしたのは一種の「危機感」だった。

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続きの内容は

V3への絶対条件…近藤が語る“シンパシー”の真意とは?
怪我で生まれた「隙」…近藤が再認識した己の「危機感」
古巣・日本ハムに近藤が年々感じる「怖さ」の正体

「(小久保裕紀)監督もおっしゃっていたように、『一度壊す』ことが大事だと思います。これまでと同じことをやっていても、当然勝てないなっていうのは僕も感じます。自分自身の結果を見ても、やっぱり去年と同じことをしていても同じ結果っていうのはなかなか生まれないので。それはチームとしても一緒なのかなと思います」

 10月30日、ホークスが日本一に輝いた直後のことだった。取材に応じた小久保監督は2026年のチーム作りについて、はっきりと言い切った。「来年どうしようという考えは、ある程度前からあるので。同じことをしていたら勝てない。『1度壊す』っていうのがテーマです」。

球界最強打者があえて口にした「危機感」

 指揮官が発した言葉は、近藤の考えと“シンクロ”した。「僕自身のバッティングについても“壊す”まではいかないですけど、1年1年、その年によっての打撃っていうのは常に考えていますね」。プロ14年間で通算打率.307を誇る打撃職人でも、シーズンが変わるたびに一からバッティングを作り直す。“現状維持は後退”との思考こそが、これまで安打を積み重ねてきた根底にある。

 その上で口にしたのは、リーグ3連覇を目指すチームにとって絶対的に必要な“条件”だった。「やっぱり『競争』じゃないですか。今年みたいにチーム内での競争があるっていうのはすごく大きなことだったと思いますし、監督が使う人を悩むくらいなら良いのかなと思います」。

 自身が離脱したことによって空いた「枠」。そこに開幕2軍スタートだった柳町が入り、最高出塁率のタイトルを獲得するまでの活躍ぶりを見せた。球界最強打者との呼び声高い近藤があえて言葉にした“危機感”。「怪我をしたことで隙を見せてしまったのは事実なので。僕自身ももう一度競争を勝ち抜かなきゃいけないと思っています」。その表情は真剣そのものだった。

 ホークスにとって3連覇が容易でないことは、“古巣”の姿を見ても明らかだ。「日本ハムも誰が出ても同じように試合をしていましたし、やっぱり試合をやっていても怖かったです。嫌らしさっていうのは、年々感じていますね」。

 チームも、そして近藤自身も再び一から土台を作り上げることが、なによりV3への近道となる。球団として約60年ぶりとなる偉業に挑む2026年シーズン。背番号3がどんな姿を見せてくれるのか。今から楽しみだ。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)