廣瀬隆太が“武者修行”で掴んだ手応え 大野稼頭央との共同生活…自炊は「バリ硬でした」

田代健太郎トレーナー、廣瀬隆太、フェリペナテル4軍投手コーチ、大野稼頭央(左から)【写真提供:大野稼頭央投手】
田代健太郎トレーナー、廣瀬隆太、フェリペナテル4軍投手コーチ、大野稼頭央(左から)【写真提供:大野稼頭央投手】

メジャー級のコーチに求めた“技術向上”

 何かが吹っ切れたような表情で、1か月の海外生活を振り返った。「面白かったです」。プエルトリコでのウインターリーグを終え、屈託のない笑顔で語ったのは廣瀬隆太内野手だ。

「半分はビジターで、一番遠いところだと車で2時間半(の移動)とか。(試合)中止がなくて、雨が降っても止むまで絶対に待つんです。1時間待って、夜中の12時に終わることもありました。日本ならすぐ中止なので、そこは一番驚きました」

 異国の地で野球漬けの生活を送り、20試合に出場して打率.264、1本塁打、5打点。海外の強打者もいるチームで4番を任されることもあった。そんな廣瀬が明かしたのはプエルトリコでの「貪欲な姿勢」と、来季への確かな手応えだ。

会員になると続きをご覧いただけます

続きの内容は

廣瀬が吸収したメジャー級コーチの「守備ドリル」とは
球速に慣れるため掴んだ「フォームの秘訣」
正木と合同自主トレを行う「明確な理由」

「メジャーで何十年もやってきた人がコーチだったので、そういう人の意見をいろいろ聞けました。アーリーワークも自主的にお願いしたりして。守備でも違うドリルや引き出しを持っていたので、そういうのを知りたいなと思って。吸収できるものは全て吸収してきました」

 環境の違いも、廣瀬をたくましくさせた。与えられた場所でただプレーするのではなく、その場にある全ての知識を自分のものにしようと動いた。私生活でも日本との違いは当然あったが、技術を磨こうと必死になったこの1か月は野球人生においても大事な“武者修行”だった。

 ゾーン内で真っ向勝負を挑んでくる投手たちとの対戦を通して、学びもあった。「(フォームの)タイミングをずっと模索していて、向こうはスピード(球速)が速いので、日本よりも(タイミングを)早めに取るという意識が良かったです」。放った本塁打については「風ですね。風で伸びていきました」と謙遜するが、来季へつながる価値ある1本となった。

「バリ硬」パスタに苦笑い

 期間中、3LDKのマンションでは一緒に海を渡った大野稼頭央投手と寝食を共にした。自炊もこなしたというが、そこには廣瀬らしい失敗談もあった。

「稼頭央が作っているのを見て、僕もパスタを作ろうかなと思ってやってみたら“バリ硬”になりました(笑)。インスタント麺を茹でる気分で3分くらいで食べたら、芯が残っていて……。針金みたいで全然ダメでした」。そう笑う姿からも充実の日々を過ごしてきたことがうかがえる。

 不思議な巡り合わせもあった。意図したものではなかったが、現地で背負った背番号は「31」だった。ファンから「正木さんと同じ番号ですね」とのDMが届き、「あ、確かにそうだなって思いました」。それが先輩・正木智也外野手の番号であることに気づかされたという。

 このオフはその正木との自主トレを予定している。そこには廣瀬なりの明確な理由がある。「中・高・大と同じ指導を受けてきているので、分かり合えることは多いのかなと思います」。自身と同じルートでプロ入りし、着実にレギュラーに近づく先輩から学ぶものは多い。ともに1軍の舞台で中心選手としてプレーすることを目標にする。

「面白かったです。いい経験になりました」。最後にそう言い切った廣瀬の顔つきは、来季を見据える精悍さがあった。異国の地でまた一つ強くなった背番号33。勝負の3年目は飛躍の1年にしてみせる。

(飯田航平 / Kohei Iida)