来季で育成6年目、桑原が見据える姿
室内練習場にひたすら打球音が響いていた。「育成という身で、支配下選手よりやらずに支配下になれるわけないです。練習しないと上手くなれないので」。来季、育成6年目のシーズンを迎える桑原秀侍内野手が12月中旬、静まり返ったタマスタ筑後で約2時間、黙々とバットを振り続けていた。
3年連続で今宮健太内野手のもとで自主トレを行ってきたが、「お前の取り組むべきことはバッティングだから」と助言を受け、このオフは地元・熊本にて単独で行う。来季は外野での定位置獲得、支配下昇格に向けて調整を進めている。
「まず外野で右バッターというのが少ないので」。9日に行われた現役ドラフトで佐藤直樹外野手が楽天へ移籍したことで、外野手登録の右打者は支配下では正木智也外野手ただ1人となった。育成6年目を迎える来季。年数を重ねるにつれて、自身の中で明確になった役割と支配下枠への思い――。既に始まっている競争に本音を吐露した。
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続きの内容は
・佐藤直樹の移籍で見える「本当のチャンス」
・桑原が正木から感じた「1軍で使われる」打撃の壁とは
・柳町達を参考に、桑原が克服しようとする長年の「悪癖」
「今までは『直樹さんみたいになりたいな』と思っていたので。やっぱりあの役割というか。越えないといけないなって思っていました」
右打者で守備走塁から試合に出られる選手。打撃ではパンチ力もあるなど、選手像としてどこか重なる部分もあった。「今回、現役ドラフトでの移籍は僕からしたらチャンスだなって感じです」と率直な思いを明かした。
課題とする打撃では、1軍レベルを痛感した瞬間があった。9月9日の宮崎サンシャインズとの4軍戦。左肩手術からの復帰戦だった正木が、いきなり左中間へ特大の先頭打者弾を放った。
「『あ、違うな』って。スイング、ミート力、集中力、全てが違いました。やっぱりパンチ力に関しては1軍でもすごいものがあった。でもあれくらいの打撃がないと1軍では使ってもらえないんだなって」
支配下昇格はもちろんだが、その先で1軍の試合に出場しなければならない。目標がリアルになり、練習に対する意識がより高まった。「支配下になっただけじゃダメだと思うので。1軍で出ることが目標。正直1軍の選手すごいなと思うんですけど、超えるためにどう練習するかを考えてやっていかないといけないなと思います」と力強く覚悟を口にした。
取り除く悪癖「達さんのバッティングを見ていたら…」
今は黙々とバットを振り、フォームを固めながら“悪癖”を直そうとしている。「どうしても踏み込んだ時に軸足が抜けるというのがあって、タイミングが合わないことがあったので。そこを今修正しています。(柳町)達さんとかのバッティングを見ていたら、当てる技術がすごい。スムーズにバットを出せるように、軌道を意識してやっています」
育成選手にとってはチーム状況が自分の命運を左右することがある。「今がチャンスだと思うので。来年こそ支配下にならないと、もうクビだと自分でも感じていますし」。決意の表情で語るその姿は、前だけを向いていた――。
(森大樹 / Daiki Mori)