現役ドラフト移籍から1年…上茶谷が振り返る2025年
新天地での日々は刺激ばかりだった。「自分の弱さを痛感した1年でもあるんですけど、良かったなと思うことしかないです」。DeNAから現役ドラフトでホークスに移籍した1年目。明るい表情で振り返ったのは上茶谷大河投手だった。
2025年シーズンは春先から苦しいスタートだった。春季キャンプが始まった直後の2月に右肘のクリーニング手術を受けた。5月18日のくふうハヤテとの2軍戦で実戦初登板を果たすも、ホークスでの1軍初登板は約3か月後の8月26日ロッテ戦。最終的に1軍では8試合に登板し、防御率6.92。「ダメでしたね」と悔しい表情で1年間を振り返った。
そして今年も12月9日に第4回現役ドラフトが行われ、12球団からそれぞれ1選手、計12人が移籍した。自身はDeNA時代の2023年にキャリアハイの46試合、2024年に18試合と登板を重ねてきたが、移籍初年度の2025年は8試合登板にとどまった。1年が経った今、現役ドラフトでの移籍を率直にどう感じているのか――。
「僕自身の出場機会はめちゃくちゃ減りましたけど、それ以上の価値があった年でした」
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続きの内容は
驚愕の光景が上茶谷にもたらした“納得”とは
前田悠伍に「違います」と言われた上茶谷が学んだ“新たな考え”
栗原陵矢の「平然な姿」に上茶谷が痛感した“自分の弱さ”とは
「衝撃でした」移籍直後に広がった光景
「本当に移籍してきて良かったなという思いしかないです。僕は話をたくさん聞くタイプなので、DeNAの時とはまた違う意見や考えを聞けたのはすごく勉強になりました。ホークス選手の日々の過ごし方とか、チームカラーも全然違いましたし。やっぱり色々な球団に行くのは楽しいなと思いましたね」
移籍1年目で「衝撃でした」と振り返ったのは、筑後で見た2軍やリハビリ組をはじめとした練習姿だった。「ベイスターズのファームって、外部へトレーニングに行ったりもできるので」。これまで2軍で周囲の練習内容までじっくりと見る機会が少なかったこともあり、目の前の光景に驚いた。
「育成の選手とかも、ほんまに死ぬくらい練習するので。1軍に育成上がりの選手がいっぱいいるじゃないですか。それで納得したというか。下(ファーム)からこうやって突き上げがあるからなんやなって、本当に思いました。感じたのはそこしかないですね」
悔しさを噛み締めた栗原の“姿”
新しい環境でのトレーニングに練習量――。全てが刺激だった。「(前田)悠伍とかもそうですよね。頭1つ抜けている感じがします」。具体例として2023年ドラフト1位左腕の名前を挙げた。「僕が言ったことに対して、『いや、それは違います』みたいなことを普通に言ってくるのが新鮮で。聞かれたら自分なりの考えを話しますけど。野球やトレーニングの話で、悠伍から学ばせてもらうことがたくさんあります」。
同学年との出会いも大きかった。「クリ(栗原陵矢)、マツ(松本裕樹)、(伊藤)優輔、(野村)勇、藤井(皓哉)……。みんなめちゃくちゃ練習するので。そこは驚いた部分でもあり、引っ張ってもらいましたね」。右脇腹痛でリハビリ調整していた栗原とは、一緒にトレーニングをする時間が長かった。「クリが平気な顔してやってるのに、僕ができなかったりすることが多かった。楽しみながらも自分の弱さを痛感していました」と悔しさを噛み締めた。
同学年の存在「驚いた部分」
今年の現役ドラフトでロッテからホークスへ移籍する中村稔弥投手も、同じ1996年世代。実は大学時代の上茶谷(東洋大)と中村稔(亜大)は3日続けて先発で投げ合った仲だ。「1戦目は(中村)稔弥が完封、僕が6イニングを投げて負けて。2戦目は僕と甲斐野(央)の継投で投げ勝って。3戦目は僕が投げ勝って。3日連続先発ってやばいことしてましたね」と懐かしそうに振り返った。
「DeNA時代は同世代がジャクソンしかいなかったので(笑)。良いピッチャーなのでうれしいですね」。現役ドラフトの直後には「うぇーい」とLINEを送ったが返信はなかった。「多分、もうLINEが変わっているかもです」。そう笑いながら同学年左腕との再会を待ち望んだ。
来年はもう一度先発として挑戦する。「現役ドラフトで移籍したから出場機会が増えるというわけではないと思うし、出場機会は自分の実力で掴み取っていくものなので」。環境を変えることで成績を残す選手がいる。どちらの球団が良い、悪いではなく、“新たな刺激”が選手の野球を変えている。明かした偽りのない決意――。2026年の上茶谷大河が楽しみだ。
(森大樹 / Daiki Mori)