失意の「もうええかな…」から2か月、現ドラ直後に見せた笑顔 佐藤直樹が前を向けた言葉

佐藤直樹【写真:飯田航平】
佐藤直樹【写真:飯田航平】

楽天移籍の佐藤直樹が明かした本音

 自暴自棄になりかけた際に、再び前を向くきっかけをくれたのは指揮官だった。「ドラ1で入って、大した結果も残せずに申し訳ない気持ちと、周りが良い人ばかりでいい6年間だったなと」。現役ドラフトで楽天に移籍することが決まった佐藤直樹外野手が、ホークスでの6年間を振り返った。

 今シーズンはキャリアハイとなる104試合に出場し、打率.239、5本塁打、18打点を挙げる活躍を見せた。しかし、リーグ優勝決定後の10月6日に登録を抹消され、ポストシーズンでの出場機会はなかった。チームが日本一を目指す裏で、秋季教育リーグ「みやざきフェニックス・リーグ」に参加し、汗を流した。

 層が厚いホークスの外野陣。「このチームではもう無理っすよ」。降格直後には、本音を漏らしたこともあった。挫けそうな感情もあった中、フェニックス・リーグ合流直後から佐藤直の隣で声をかけていたのは、この期間から2軍の指揮を執った斉藤和巳監督だった――。

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続きの内容は

* 斉藤監督が佐藤に明かした自身の過去
* CSの裏で苦悩した佐藤を救った斉藤監督との「10分間の対話」
* 移籍直後に佐藤直樹が語った「レギュラー奪取」への熱い決意

「『お前みたいなタイプ好きやわ』って言ってもらって。和巳さんの昔の話をしてもらったりもしました。『俺もこういう経験したことがあったからさ』みたいに」。試合前練習では1人ストレッチをする佐藤直に斉藤監督が話しかけ、約10分の対話をする姿もあった。

 1軍で100試合以上に出場し、リーグ優勝に貢献した男が、チームがクライマックスシリーズを戦う裏で2軍戦に出場する。悔しさを感じないはずがない、そんな状況では言葉の1つ1つが救いになった。

「頑張っとけよ。色々とストレスを感じたりすることもあるかもしれないけど、どういう状況であれ、いつ呼ばれるかわからないわけやし。そんなことを言ってもらいましたね」

移籍直後に力強く語った“前向きな言葉”

 フェニックス・リーグの後半には快音を連発した。「なんか正直もうええかな……みたいな気持ちになりかけてしまっていたんですけど。でも後半は頑張れました。周りに助けられました」。そう振り返った佐藤直。挫けそうになった時も、先輩、監督、コーチが支えてくれた。

 移籍決定直後にはみずほPayPayドームを訪れ、力強く語った。「レギュラーを獲って、意味わからんくらい打ちまくりたいです。気持ちを入れ替えて、一から頑張ろうっていう気持ちです」。そこにはもう、後ろ向きな言葉をこぼしていた姿はなかった。

 この日取材に応じた永井智浩・球団統括本部統括副本部長兼編成育成本部本部長も「本当にレギュラーを獲れる能力がある選手なので」と認める28歳の潜在能力。佐藤直にとって、この移籍はもちろん大きなチャンスとなる。新天地で大輪の花を咲かせるのを、たくさんのホークスファンが期待している。

(森大樹 / Daiki Mori)