10年目の今季は軒並みキャリアハイ…ホークスの救世主に
2025年のホークスを救った男が“本気”でレギュラーを掴み取りにいく。プロ10年目の今季を戦い抜いた川瀬晃内野手が明かしたのは、兄弟自主トレの「解消」と、来季に向けた強い決意だった。
記録よりも記憶に残る1年だった。チームのターニングポイントとなった5月2日ロッテ戦(みずほPayPayドーム)でのサヨナラ打に、日本ハムとの激闘を演じたCSファイナルステージ第6戦での決勝打。「川瀬ならなんとかしてくれる」とのファンの願いに、28歳は応え続けてきた。
102試合に出場した今季はプロ初本塁打を含む2本塁打をはじめ、50安打、23打点と軒並みキャリアハイを記録。ホークスに欠かせない戦力として、開幕から最後まで走りぬいた。そんな男が昨オフ、漏らしていた本音。「もちろん現実にならないだろうなっていうのは思ってました」。あれから1年――。川瀬から出てきたのは対照的な言葉だった。
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続きの内容は
定位置奪取を「現実にならない」と語った過去の真意とは?
弟との「兄弟自主トレ解消」を決めたシンプルすぎる理由
「今宮さんだけじゃない」川瀬が割って入りたいライバルは?
「自分がよりレベルアップしていくためには、本当にレギュラーを目指して、もっともっと強い意志を持ってやらないといけないなっていうのは思います」
これまでも毎年のように定位置奪取を掲げてきた。もちろんその思いに偽りはなかったが、一方で現実にも向き合ってきた。「壁なんか、最初からずっと感じていますよ。そんな敵うわけがない。今だから言いますけど、もちろん現実にならないだろうなっていうのは思っていました。それでもレギュラーを奪うと口にしたのは、自分にプレッシャーをかけるためです」。今年1月の自主トレ期間には、偽らざる本音を口にしていた。
「収穫はあった」…明かした手応えと危機感
大きな飛躍を遂げた2025年シーズン。リーグ連覇、そして5年ぶりの日本一に輝いたチームの力になれたとの充実感もあるが、一方でプレーヤーとしての満足感はない。「まずはキャリアハイを目指したいですね」。すでに目線を来季へと向けている28歳は、レギュラー獲りに向けた手応えと課題を口にした。
「やっぱりバッティングですね。今年は出塁率に関して、ちょっと収穫はあったので。フォアボールもある程度は取れましたし、そういう面ではいいものを出せたので。ただ、もっとやらないと試合には出られないなっていうのも感じています」。今季は224打席で20個の四球を選び、打率.263に対して出塁率.336をマーク。これは200打席以上に立った中で、チーム上位5位の数字だった。
今オフの自主トレにも決意は現れている。昨オフはオリックスの川瀬堅斗投手と「兄弟自主トレ」を行ったが、今回はあえて“解消”を選んだ。「大した理由はないですよ」と笑みを浮かべつつ、「まあ他のチームの選手ですし、ポジションもピッチャーなので」。今後はウエートトレーニングを中心に、自らのやるべきことに全集中するつもりだ。
「ライバルは今宮(健太)さんだけじゃなくて、(野村)勇さんもそうですし、たくさんの選手がいますから。そういうレベルの高い先輩たちがいるからこそ、自分のレベルも毎年上がっていると思うので。そこに割って入っていきたいですね」
日本一のチームで定位置を掴むことの難しさは、誰よりも川瀬が一番知っている。それでも、2026年は本気でレギュラーを奪いにいく。川瀬晃の決意は揺るがない。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)