宮里が漏らした本音「普段はこんなこと絶対に考えない」
室内練習場の片隅での会話は約1時間にも及んだ。「『どしたん?』って。僕が最近、浮かない表情をしていたので」。タマスタ筑後での秋季練習最終クール、宮里優吾投手は斉藤和巳3軍監督の言葉に救われた。
宮里は今季、2軍で17試合に登板して自責点はわずか「1」。防御率0.48の成績を残した。「正直、今年はもう絶対にいけると思っていた」と手応えはあった。しかし、7月末の支配下選手登録期限までに吉報は届かなかった。
今季、育成から2桁の背番号を手にした宮崎颯投手と川口冬弥投手がわずか1年で戦力構想外通告を受け、再び育成契約を打診された。「和巳さんとこういう話をするのは初めてでした」。誰よりも“支配下のイス”を2投手と争ったからこそ生まれた感情。そして指揮官が真正面から寄り添いかけてくれた言葉が――。
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続きの内容は
・戦力外を目の当たりにした宮里投手が漏らした「意外な本音」
・暗い表情の宮里を救った斉藤監督からの「真正面からの言葉」
・宮里の表情を一変させた指揮官の言葉が来季への「道標」となった真意
「元々そういう細かいことを気にするタイプじゃなかったんですけど……。やらないといけないのも当然わかっているんです。でもどういうモチベーションで練習したらいいんだろうと、頭の片隅で勝手に悩んでしまっていて」
昨年も支配下登録された三浦瑞樹投手と仲田慶介内野手が1年で戦力構想外通告を受けたが、その時は「逆にチャンスだと思っていた」という。しかし、今年は宮里も圧倒的な成績を収め、川口、宮崎と争った1人だったからこそ、昨季とは違うもどかしさが生まれた。
「普段はこんなこと絶対に考えないんですけど、たった1年での戦力外を見て考えちゃっていたんだなって。今年はより一層現実的じゃないですけど、意識してしまっていたのかなと思います」と本音を漏らした。
斉藤3軍監督が宮里にかけた言葉
暗い表情をしていた宮里の姿を見かねて、練習中に斉藤監督から「ちょっと話そう」と声をかけられた。約1時間、室内練習場で2人だけの時間が流れた。「半分相談、半分喝みたいな感じでした。でも、本当にちゃんとやらないとなって思いました」と振り返る。今抱えている苦悩や迷いを指揮官に打ち明けると、真正面から言葉をかけてくれた。
「お前はそういう細かいことを考えるタイプじゃないだろ。1年目に入ってきたころからがむしゃらにやっている姿をずっと見てきたから。絶対、お前らしく思いっきり腕を振っている姿の方がいいよ」
理解はしていても気持ちが上がらない――。そんな状態の時にかけてもらったこの言葉は、初心に戻るきっかけをくれた。「そんなことでダメになっちゃいけないと思うし、(気持ちが)楽になった」。寄り添ってくれたことがうれしかった。
7月にも相談「どうすれば…」
実は、シーズン中の支配下登録期限が迫った7月にも斉藤監督に相談したことがあった。「どうすれば支配下になれるかという悩みに、配球やストライク率といった技術的なことを話してくれました」。常に自分が苦しい時にアドバイスをくれる存在。「その時もですし、軍も違ったのにめちゃくちゃ見てくれているんだなって。投球映像も見てくれていて。ありがたいです」。
シーズン終了直後の言葉は、来季への“道標”となった。「このタイミングで言ってもらえて、引きずらずに済んでよかったです」と感謝した。「来年のキャンプで支配下に上がりたいと思っているので、オフはもう一度後悔がないように準備します」。来シーズンこそ、1軍の舞台で活躍する――。もう宮里優吾の表情には一点の曇りもなかった。
(森大樹 / Daiki Mori)