正木智也が語る「今年最も感謝している人」
あの会話がもしなかったら――。正木智也外野手は2025年シーズンを振り返り、最も感謝している人を問われると「小久保監督ですね」と指揮官の名前を挙げた。その言葉には、野球人生を大きく揺るがす決断を後押ししてくれた深い感謝が込められていた。
大卒4年目の今季、開幕戦を「5番・左翼」で迎えた。不動のレギュラーとしての立ち位置を固めようと臨んだが、4月18日の西武戦(ベルーナドーム)で強振した際に左肩を亜脱臼。「バンカート修復術」を受け、半年にわたるリハビリを余儀なくされた。
正木が明かしたのは手術の決断をする直前に小久保裕紀監督からかかってきた1本の電話だった。「監督としてではなく、一野球人として……」。約6か月ぶりの1軍合流となった10月14日にも2人の間で交わされた会話があった。さらに術後の制限が解ける“完全復活の日”への思いも語ってくれた。
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続きの内容は
正木智也が明かす「完全復活の日」とは
小久保監督が語った“未来の姿”とは
恐怖を乗り越えた正木の「本音」
「最も感謝している瞬間」として改めて口にしたのは、怪我の5日後、手術の決断を後押ししてくれた小久保監督からの電話だった。
「最初(怪我した直後)は、自分が『手術はしません』と言っていたので。ある日、筑後でのリハビリから帰ったら『きょう電話していい?』って連絡を頂いて。(電話では)手術をした方がいい理由、小久保監督の考えてることを真っすぐに伝えていただいて。それがすごい腑に落ちました」
現役時代に様々な怪我を経験してきた指揮官が考えたのは、正木智也という野球選手の“未来の姿”だけだった。「これからの野球人生はまだ長い。やっぱり怖さとかも絶対に残るから。監督としてではなくて、一野球人として手術をしたほうがいい」。その言葉に背中を押され、正木は手術を決断。今季絶望と言われた中で懸命なリハビリに励み、ポストシーズンでの復帰を果たした。
CSファイナルステージ開幕前日の10月14日に1軍合流した際には、小久保監督から「手術してよかったやろ」と声をかけられ、「本当によかったです」と胸を張って答えることができた。
「あの時、手術を受けなければもっと早く試合には戻れていたかもしれない。でも、やっぱり野球人生はまだ続くので。怖さもなくなりましたし、先を考えて手術を受けて良かったなと。今は本当に感謝しています」
正木が語る制限解除予定の「12月30日」
4月30日に受けた手術から8か月後の「12月30日」。あくまで目安ではあるが、この日から両手打ちの制限が解除される予定だ。
「まだオフ期間ですし、多分12月30日を過ぎてもしばらくは片手は離さないと思います。2月のキャンプからになるかなって。片手を離さない方が良かった部分もあったので」
それでも、全ての制限が解除される日というのは正木にとっても間違いなく大きな指針となっている。「やっぱりまだダイビングキャッチができないので。そこができるようになったら、もう完全復活なのかなっていうのはありますね」。手術を乗り越え、怖さが消えた完全体の姿へ。来季は間違いなく勝負のシーズンになる。
「チームが日本一になったのはすごくうれしかったです。でも個人としてはやり切った感は全くなかったですし、何にも貢献していないので悔しさの方が大きかったです。来年は特に勝負のシーズンだと思うので。自分に厳しくオフは過ごしたいなと思います」
2026年シーズンは背番号「31」の活躍が1年を通じて見られるように――。多くのファンがその姿を待ち望んでいる。
(森大樹 / Daiki Mori)