涙を浮かべ掲げた“背番号7”の舞台裏 牧原大成が明かした感謝「晃さんの分も…」

中村晃のユニホームを掲げる牧原大成【写真提供:産経新聞社】
中村晃のユニホームを掲げる牧原大成【写真提供:産経新聞社】

中村晃のユニホームを持参…照れ笑いで明かした真意

 5年ぶりに訪れた日本一の瞬間。支え合い、救い合った“仲間”の象徴を手に、歓喜の輪に加わった。牧原大成内野手が掲げていたのは、股関節の違和感で離脱した中村晃外野手のユニホームだった。

 ホークスは30日、甲子園で行われた阪神との日本シリーズ第5戦に3-2で勝利し、日本一を掴み取った。牧原大は2打数無安打。7回2死一、二塁のチャンスで代打を送られて、日本一の瞬間はベンチから見届けた。あとワンアウト、あと1球。目指してきた瞬間が一歩ずつ近づく中、両手で握り締めていたのは背番号「7」のユニホームだった。

 小久保裕紀監督も「あいつがいたからリーグ優勝できた」と、中村の存在に全幅の信頼を寄せていた。日本シリーズ直前に股関節の違和感もあって無念の離脱。なぜ盟友のユニホームを敵地まで持参したのか。「わかるでしょ! そんなの聞かなくても!」。照れ笑いしながら明かしたのは、中村に対する偽らざる思いだった。

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続きの内容は

牧原が明かした、ユニホームへの「秘めた決意」
中村晃へ贈る、日本一の裏にあった「感謝の言葉」
涙の理由…先輩との「絆」が深まった瞬間

支え合い救われた1年間…純粋な感謝の思い

「本当に最後の最後、怪我していなかったので。晃さん自身が一番悔しいと思う。でも、その悔しさを自分たちが持って挑んで、勝ててよかったかなと」

 みずほPayPayドームでの試合前練習。グラウンドに姿を見せるのは、いつも2人が最初だった。主力選手が次々と離脱した中、春先からホークスを支えたのは牧原大と中村だ。「晃さんがいてくれてよかったって思うことは何回もありましたし、晃さんが感謝してくれることもあっただろうと思うので。本当にいいシーズンだと思います」。日本一という最大の目標をつかんだからこそ、心から感謝を口にできる。

甲子園に「持っていくって決めてたので」

 中村の日本シリーズ欠場が決まったのは、甲子園に移動する前。ユニホームは福岡に置いていかれるはずだった。「いやいや、持っていくって決めていましたよ」と牧原大。3連勝すれば、もう本拠地には戻ってこない。歓喜の瞬間を背番号7に“見せる”ために、そっとユニホームをカバンにしのばせた。

 いつもグラウンドでは強気を貫く牧原大だか、日本一を前にして思わず涙を浮かべた。「よかったですよ。晃さんの分も泣いたと思います。本当に勝ててよかったです」。絶対に後悔しないよう、全力でグラウンドを駆け抜けた。頂点に立った2025年、大好きな先輩との絆はもっともっと深くなった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)