審判との激突…中村晃が打ち明ける本音 “野球人”としての敬意「だからこそ感動が」

日本ハムとのCS第4戦で一塁塁審と激突

 阪神との日本シリーズを制し、ホークスは5年ぶりの日本一を掴み取りました。鷹フルでは選手1人1人に焦点を当てて、2025年を振り返っていきます。中村晃外野手が語ったのは、日本ハムとのCSファイナルステージで起こってしまった審判との“激突”。口にしたのは野球に対する真摯な思いと、審判に対する“野球人”としての強いリスペクトでした。

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 股関節の違和感もあり、日本シリーズでは出番がなかった。それでも小久保裕紀監督が「晃がいたから優勝できた」と語ったように、2025年シーズンにおいてその存在は必要不可欠だった。

 アクシデントに襲われたのは、日本ハムとのCSファイナルステージだった。18日に行われた第4戦、内野ゴロを放った際に一塁を駆け抜けると、審判と正面衝突。グラウンドに後頭部を打ち付けると、そのまま倒れ込んだ。自力で立ち上がることもできず、担架で退場。病院を受診した結果、「後頭部の打撲」と診断された。

 不慮の事故とはいえ、その後の出場機会はなし。これが2025年最後のプレーとなった。全てが終わった今だからこそ、一連の出来事を振り返ることができる。中村晃が明かした価値観は、野球というスポーツの本質を語るものだった。

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続きの内容は

・中村晃が語る、衝突後の審判との会話
・ロボット審判導入に中村晃が抱く思い
・中村晃が見た、日本一への「全員野球」
一塁塁審と激突しグラウンドに倒れ込む中村晃【写真:加治屋友輝】
一塁塁審と激突しグラウンドに倒れ込む中村晃【写真:加治屋友輝】

絶対安静で見守った19日の日本ハム戦

「全然何とも思っていないというか、起こってしまったことは仕方ない。そういうことも起こりうるのが、やっぱり『人間がやる』ということじゃないですか」

 衝突が起きた18日、試合終了の直後だった。実は一塁塁審の嶋田哲也さんがホークス側に謝意を伝えにきた。「申し訳ないことをした」。ぶつかってしまったのは、お互いに自らの役割を全力で果たそうとした結果。翌19日の試合は「絶対安静」で見守ることしかできなかった中村だったが、「(もどかしさも)全然ですよ。(チームメートに)『頑張れ』って感じで、裏から見ていました」。全幅の信頼を寄せるナインの戦う姿を見つめていた。

2026年シーズンからMLBではロボット審判が導入へ

 メジャーリーグでは来季からロボット審判が本格的に導入されるが、野球は「人間がやるから面白いんじゃないですか」ときっぱり言い切る。常に真摯な姿勢を貫く中村らしい価値観。プロ18年目のベテランが口にしたのは、審判への絶対的なリスペクトだ。

「試合を進める上で、一緒にゲームを作る人たちなので。それがなくなったら面白くなくなるし、スポーツを見る人も減るかもしれない。結局は人間がやることですし、だからこそ感動やドラマが生まれる。ファンの人たちも、それを見にきているわけじゃないですか」

“感動”という表現が、中村らしい。キャリアを振り返ると当然、どんな瞬間にも審判の存在がいた。予期せぬアクシデントに見舞われながらも、その根底にあるのは野球というスポーツへの深い理解だ。人間が織りなす筋書きのないドラマだからこそ、野球は面白い。

 日本ハムと激闘を繰り広げたCS、そして日本シリーズも制したナインを頼もしく見つめていたはずだ。「やっぱり全員で勝つのが今年のチーム。最後も全員野球で勝てたのはよかったです」。最高の“ドラマ”を作り上げ、ホークスファンに日本一を届けた。大きな器でどんなことも受け入れるからこそ、“愛する男”だ。

(竹村岳 / Gaku Takemura)