この真剣勝負に、周りの若鷹たちは練習を止めて熱視線を送った。日本一の打者が見せる一挙手一投足から何かを掴もうと、食い入るように見つめる選手たち。それぞれの立場で近藤と“対峙”し、その姿から何を感じ取ったのだろうか――。
〇牧原巧汰捕手
――近藤選手の打撃を見つめていた。
「教科書というか。コンさん(近藤)を見たら、やっぱりこの打ち方が正解なんだろうなと。合う合わないはあると思うんですけど、これができていないと1軍のピッチャーは打てないんだろうなと感じました」
ーー「これ」というのはどんな部分?
「ボールに対してしっかり入っていくというか、空間の使い方。自分はボールに対して急に打ったりして、刺されたりしているんですけど、コンさんにはゆとりがあって、ゆっくり振ってるイメージなのにボールは飛んでいる。自分もそれをテーマにやっているので、どういうタイミングで打たないといけないかが、コンさんのバッティングを見るとすごくわかりました。それを注目して見ていました」
――近藤選手のバットを手にしているが?
「以前に、これよりもちょっと長いバットをいただいたことがあって。振りやすいんですけど、試合で使うとまだちょっと振り遅れる感じがして。試合で対応していくためには、もう少し短いのが必要だなと思って。これは少し短いんですよ、0.5インチくらい。それをコンさんも使っていたので、『いただけないですか』と言ってみたらいただけました」
――お願いする時は緊張したのでは?
「いや、緊張します。コンさんもこれで仕事をしているわけですし、それをいただくのはずうずうしいと思うんですけど。でもコンさんが、どんなバット使っているのかすごく気になっていたし。日本一のバッターじゃないですか。折らないように大事に使っています」
〇岩崎峻典投手
――ライブBPで近藤選手と対戦。手応えは?
「4打席だけなので。そりゃ日本で一番良いバッターと対戦できたのでよかったです。だけど怖さがありました。狙われている感というか」
――球種を狙われている感じ?
「球種ですね。これまでツーシームを簡単にパコーンって打たれることがあまりなかったので。ちょっとびっくりしましたね」
――アウトコース中心の配球だった。
「ファウルにもなっているんですけど、捕えられたファウルだったので。初見で打たれたことはなかったので、やっぱりびっくりしました」
――日本で一番良いバッターの打撃は違った?
「違います。たぶん真っすぐをそんなに強く弾こうとしていなかったと思います。それが試合になったら、真っすぐを弾いてくるので。それをやりだしたら抑えれないですね、多分」
――遊ゴロもありましたが、手応えは感じなかった?
「感じないですね。感じなさすぎて……。打ち損じ待ちしかないです。今は」
――「今は」ということは?
「後々には。自分が思ったイメージで抑えられるようになりたいです。今は無理です。今後です」
――抑えられるイメージを作るにはどうしますか?
「マッチョになるしかないっすね」
――体を大きくして力強さを出す?
「やっぱり小さいので、他の人に比べて。もっとマッチョになります」
――マッチョになったら近藤選手も抑えられる?
「抑えます! 今は無理っす。スーパーバッターです」
〇大友宗捕手
――近藤選手の打席で、捕手として何を感じた?
「やっぱり圧倒的にポイントが近いです。この辺(捕手に近いところ)からバットが出てきていました。後ろが長いからどこでも芯に当たるっていう。逆方向に打っていたのも、芯に当たっていましたし。後ろから入ってきているのはすごく感じました。前に川口(冬弥投手)がシートバッティングで投げている時も自分が座らせてもらったんですけど、その時もすごく感じました」
「きょうはインコースはあまり使いませんでしたけど、内側にいかないと嫌な感じはしますね。外だと、ずっと後ろから打たれて逆方向に良い打球を打たれそうなイメージがありました。内を上手く使わないと抑えられないなと感じました」
――抑え方の勉強にもなった?
「良いバッターの特徴だと思います。後ろが大きくて、後ろからボールを捉えにいけて、(ミートするポイントの)ラインが長いというのは。自分もバッティングでそれをできるように練習していますし、そういうバッターが良いバッターだなとシンプルに感じます」
――捕手として座っているだけでも、近藤選手のバッティングは参考になった?
「なりますね。自分が『なりますね』と言っていいのか分からないですけど。でもそういう目で見ちゃうというか。球界ナンバーワンのバッターですから。みんな見てましたけど、その価値は絶対にあると思います。中々見れないじゃないですか」
――岩崎投手の投球はどうでしたか?
「試したいことを試している感じでした。内は使わずに外中心で、全球種を使った中で、彼なりに色々なことを考えながら。首も振っていたので、自分の考えを持ってやっているんだなと感じました」