栗原が9、10月の月間MVPを獲得
ホークスに不可欠な存在であることを自らのバットで証明した。日本ハムとのし烈なペナント争いを力強くけん引したのが、栗原陵矢内野手だった。9、10月は24試合に出場して、打率.359、3本塁打、20打点を記録。「大樹生命月間MVP賞」を獲得するなど、まさに期待に応える活躍を見せた。
「優勝するために彼の存在は絶対に必要。9月に月間MVPを取るくらい大暴れして、『最後いいところを持っていったな』みたいなイメージでやってほしい」。左脇腹痛からの復帰を目指していた29歳に小久保裕紀監督が寄せた期待は、現実のものとなった。
しかし、シーズンを振り返る本人の口調は、驚くほど冷静だ。「1打席1打席、やる事をやろうと。集中してやるだけです」と淡々と語る。栗原が明かしたのは、“頂上決戦”を控える中で最後に実現させたい思い、そして抱き続けてきた本音だった。
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続きの内容は
・栗原が明かす「苦しいシーズン」の裏側
・4連敗を変えた「決起集会」の真相
・監督が栗原に託した「真の期待」
「苦しいシーズンでした。怪我をしたこともそうですし、怪我をしていない時でも、それほどチームに貢献できていないという気持ちが大きかったです。だからこそ最後は力になりたいというか、本当にチームの為にという思いが強かったです」
今季は2度、怪我による離脱を余儀なくされた。そんな栗原の心の中には、常に危機感があった。だからこそ、シーズン終盤に向けて「本当に覚悟を決めてやってきました」と語る。その覚悟が、リーグ優勝を手繰り寄せる活躍の原動力となっていた。
4連敗の空気を変えた一席
それでもチームは、優勝マジック「7」で迎えた9月20日からの9連戦で足踏みする。初戦からオリックスに4連敗を喫し、重たい空気が流れた。その時に開かれたのが“プチ決起集会”だった。近藤健介外野手、柳町達外野手、川瀬晃内野手、海野隆司捕手らが参加したという。
「(球場の)場所も変わりますし、対戦チームも変わるんで、そういう意味でやっただけです」
世間が想像するような「危機感からの決起集会」ではなく、もともと栗原が声をかけていた食事会。それは連敗にも揺らがない、日常の延長線上にあった。この翌日、24日の楽天戦から優勝を決めた27日の西武戦まで、チームは負けなしで頂点まで駆け抜けることとなった。
応えた指揮官の期待
その栗原に対し、小久保監督は絶大な信頼を寄せていた。シーズン終盤に見せた栗原の活躍について「去年もここで打たんかったら(2軍で再調整)というところから、(5月度の)月間MVPを獲った。そういう力があるということです」と語っていた。単なる期待だけではない。栗原が持つ勝負強さと底力を誰よりも信じているからこその言葉だった。その思いに、背番号24は見事な結果で応えてみせた。
手に汗握る展開でクライマックスシリーズを突破し、いよいよ最後の山場を迎える。個人の結果は、もはや眼中にない。とにかくチームが日本一になれれば、それでいい――。栗原は、そんな純粋な思いを口にした。
「最後まで“良い顔”で野球ができたらと思います」
(飯田航平 / Kohei Iida)