杉山に火をつけたモイネロの感情爆発 ブルペンが受け取った“闘争心”「僕らもなんとか」

最後の打者を抑えて雄叫びを挙げる杉山一樹【写真:加治屋友輝】
最後の打者を抑えて雄叫びを挙げる杉山一樹【写真:加治屋友輝】

守護神がエースの姿に感じたもの

 しびれる投手戦の末に、歓喜の瞬間が訪れた。2-1で勝利を収め、日本シリーズへの切符を掴んだクライマックスシリーズ(CS)ファイナルステージ第6戦。1点のリードを守り抜き、マウンド上で雄叫びを上げたのは、守護神・杉山一樹投手だった。

 この日の試合前練習で、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は「泣いても笑っても最後」と投手陣を鼓舞した。その中心で熱投を見せたのが、中4日で先発したリバン・モイネロ投手だ。7回1失点と力投する中で、特に気迫が表れたのは7回2死の場面。この日初めて与えた四球に、悔しさを爆発させグラブを叩きつけた。

「グラウンドであそこまで気持ちを出したのは多分今までなかった。状況的に三振が取れるところで四球を出したのが悔しかったので、感情が出てしまいました」

 試合後に理由を語った左腕。その様子をブルペンで見つめていた杉山の胸には、特別な感情が湧き上がっていた。チーム一丸となって掴んだ勝利の裏で、守護神はエースの姿に何を感じ、どんな思いを胸に最後のマウンドへ向かったのだろうか。

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続きの内容は

・杉山が明かす、モイネロの闘争心に感じた「刺激」
・守護神・杉山が腹を括った「ブルペンでの会話」
・勝利に凝縮された「チーム全員の思い」の正体
グラブを叩きつけたリバン・モイネロ【写真:加治屋友輝】
グラブを叩きつけたリバン・モイネロ【写真:加治屋友輝】

エースが見せた剥き出しの闘争心

「負けられない最後の1試合で、モイネロ自身もすごく気持ちが入っているのは伝わりました。あそこまで抑えてくれたので、僕らもなんとか勝ちで終われるようにっていうのは強く思いました」

 杉山は、モイネロが見せた剥き出しの気迫を“刺激”として受け取っていた。「珍しいですね。だからこそ思いを感じました。野手が頑張って点を取ってくれて、モイネロが長いイニングを投げてくれた。その思いはかなり感じていました」。負ければ終わりの緊迫した状況。特別な思いを胸に、守護神は9回のマウンドに上がった。

勝利を収め抱き合う杉山と海野【写真:加治屋友輝】
勝利を収め抱き合う杉山と海野【写真:加治屋友輝】

腹を括ったブルペンでの会話

「もう負けたら終わりですし、同点も嫌だったので。しかもレイエスからだったので緊張しました」。このシリーズで4本塁打を放っている日本ハムの主砲に対し、最大限の警戒をしていた。しかし、その極限の緊張の中にも揺るぎない覚悟があった。

「準備中に海野が来て、『どういう感じでいくか』っていうのは話しました。基本チェンジになったら来てくれるんで。そこである程度自分たちで相談して、という感じです。僕もそれで腹を括ったんで、すんなり行けたかなと思います」

 言葉通り、レイエスを156キロのストレートで見逃し三振に斬って取る。迷いなく腕を振れた背景には、海野との綿密なコミュニケーションと築いてきた信頼関係があった。続く4番・郡司からも三振を奪うと、最後は清宮を左飛に打ち取って激闘に終止符を打った。

 モイネロが感情を見せたあの瞬間。ブルペンは「どうした? どうした?」といった驚きがあったという。エースが気迫で手繰り寄せた勝利のバトンを、最高の形で守り抜いた守護神。そのマウンド上の姿には、この一戦に懸けるチーム全員の思いが凝縮されていた。

(飯田航平 / Kohei Iida)