山本恵大が“球団アンケート”に記した意思 1度は頓挫した人生初の挑戦「不安しかない」

ファーストミットでノックを受ける山本恵大【写真:森大樹】
ファーストミットでノックを受ける山本恵大【写真:森大樹】

山本が今宮のノックを見つめていた

 2軍の全日程が終わり、来季に向けて若鷹が練習に励んでいた4日のタマスタ筑後。室内練習場には普段とは違う光景が広がっていた。ノックで華麗なグラブさばきを見せていた今宮健太内野手の姿を、1人の選手が熱心な眼差しで見つめていた。今年5月に支配下登録を果たし、1軍でも25試合に出場した山本恵大外野手だった。

 練習では高田知季2軍内野守備走塁コーチからアドバイスを受けながら、内野陣に混ざってノックに参加した。外野手の山本が内野ノックに加わる姿は、シーズン中には見られなかったものだ。

「今宮選手からアドバイスを受けたり、内野ノックを受けていましたが、あれはどういう取り組みなんですか?」――。真意を本人に尋ねると、返ってきたのは意外な答えだった。

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続きの内容は

・新しい挑戦の「意外なきっかけ」
・山本が感じた「本当の難しさ」
・今宮からの「成長のヒント」

「外野だけではなく一塁もやってみたいなと。新たな挑戦ということで自分の幅を広げたいですし、出場機会も増やすためにっていうのはあります」

 真っすぐな目でそう語った26歳。今季初めて1軍を経験し、「走攻守すべてできないと、最初(スタメン)からは出られない」と痛感したという。打撃だけでなく、守備や走塁など細かいプレーの重要性を改めて理解し、どうすれば1軍でチャンスを増やせるかを考え続けた。その答えの1つが、新たなオプションとしての“一塁挑戦”だった。

自らの意思表示で始まった新しい挑戦

 この挑戦は、本人の意思表示から始まった。2軍の全日程が終了した後、球団による自由記述式のアンケートが行われた。その欄に「ファーストに挑戦してみたい」と書いたのがきっかけだった。そこからコーチ陣と「じゃあ、やってみるか」という話になり、10月に入って本格的に練習を開始した。

 実はシーズン中にも1度、一塁挑戦の話が浮上していた。「少しでも(一塁の)経験があるならすぐにやってみたかったんですけど、全くやったことがなかったので」。当時は踏み切ることができなかったが、満を持してこの秋から未知のポジションへの挑戦を決意した。

「ずっとピッチャーをやっていて、そこから怪我をして外野に転向しました。外野を本格的にやり始めたのは高校3年か大学くらいからです」。野球人生の中で、練習でも内野を守った経験はほとんどない。「不安しかないですけど。基本の『き』からですね」と笑顔を見せた。

今宮健太のノックを見つめる山本恵大(右)【写真:森大樹】
今宮健太のノックを見つめる山本恵大(右)【写真:森大樹】

明かした今後のプラン「やっぱり難しい」

 慣れないポジションには、外野とはまったく違う難しさがある。「怖いですよ、やっぱり。(打者との)距離も近くなりますし、ボールの見え方も全然違う。外野は外野で難しいですけど、やっぱり違います」と率直な心境を口にした。

 6日から宮崎で行われるフェニックス・リーグでは「全然、外野を守ります。いきなり試合でというようなレベルではないので。試合が終わった後や試合前練習に入って、という感じです」と今後のプランについて明かした。

「何も知識がないので、逆に入り込みやすいなと」。練習中には今宮から身振り手振りを交えてアドバイスを受けるなど、貪欲に技術を吸収しようとしていた。「“遊び心”が大事らしいので、少しずつ慣れていきたいです」。新たな挑戦の一歩を踏み出した男の表情は晴れやかだった。

(森大樹 / Daiki Mori)