3か月の2軍生活「抑えても上がれない」 ベンチから“別人”の声…伊藤優輔が変貌した理由

オリックス戦で登板した伊藤優輔【写真:小池義弘】
オリックス戦で登板した伊藤優輔【写真:小池義弘】

伊藤優輔が1軍再昇格後、初登板で2回無失点の快投

 23日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)で敗れ、痛恨の4連敗を喫したホークス。その中で輝きを放ったのは成長した右腕の投球だった。「明らかにレベルアップしていたと思う。前回、1軍にいた時よりもすごく良かったですね」。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)が絶賛したのは、伊藤優輔投手だった。

 伊藤は1点ビハインドの8回にマウンドへ上がると、カットボールを軸に3者凡退。続投した9回も安打は許したが、2三振を奪って無失点に抑えた。この日の最速は154キロ。「いつ呼ばれてもいいように準備ができていたので、すんなり入れたかなと思います」と冷静に振り返った。

 6月12日に1軍昇格し、2試合に投げて無失点と結果を残したものの、23日に登録抹消された。降格後は2軍で17試合登板し、失点はわずか1試合のみと快投を続けた。「抑えていても(1軍に)上がれないのは、昨年までも経験していましたし、もうしょうがないかなと……」とこぼず場面もあった。それでもここまで成長した姿で上がることができたのは、1度目の昇格からの過ごし方にあった。ベンチからも声が上がった伊藤の“激変”ぶりとは――。

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続きの内容は

・倉野コーチからの「課題」の全貌とは
・ベンチが驚いた、伊藤優輔の投球スタイル
・2軍で積み重ねた努力 1軍で実を結んだ変化

「最初に昇格した時、倉野さんから課題を明確に伝えてもらいました。前回(の1軍昇格時)はまだ先発から中継ぎに戻ったばかりだったので、その後の2軍での時間は、その課題にじっくり取り組むことができました。もう勝負だと思ってやっているので、今は『1軍でやってやる』という覚悟が大きいです」

 オープン戦とシーズン序盤に先発をしていた時は、どうしても次のイニングを考えて力をセーブしてしまっていた。2軍で先発として4連敗を喫し、5月に中継ぎ転向。そこから徐々に自分を取り戻し始め、その過程で一度1軍を経験した。1軍投手陣の強い真っすぐを間近で見て、自身のストレートにも強さを求め、それを生かして変化球でしっかり空振りが取れるようにすることを意識した。その結果、2軍では真っすぐがコンスタントに150キロを計測し、多くの空振りを奪って自信を付けた。

「自身の強みなどを再確認しながら、ファームで課題と向き合うことができました」と本人も力強く語った。倉野コーチも「2軍でやってきたことが、そのまま出せたと思います。ファームでしっかり取り組んできた努力が実を結んだ投球だったのではないでしょうか」と、右腕の努力を称えた。

ベンチからも絶賛の声が上がった

「イメージががらっと、別人みたいに変わりました」。そう明かしたのは、伊藤の巨人時代も知る古川侑利1軍アナリストだ。

「キャンプからオープン戦で先発していた時の投球スタイルとはがらっと変わって、短いイニングでどんどん押していくスタイルになっていました。速い直球にカットボールとスライダーが効果的で、打者からすれば嫌だろうなと……。すごく良かったです」

 古川アナリストは、9月22日に伊藤とキャッチボールをした際に「全然ボールが落ちてこないな」と感じたという。春先にキャンプやブルペンで見ていた時と比べて、明らかに球威もキレも増していた。

「抑えていても上がれない、という時期もありました。けどそこは割り切ってやることができました」と振り返った伊藤。「こうしてチームが良い位置で戦っている時期に1軍に呼んでもらえましたし、自分としてすごくやりがいを感じています」。シーズン序盤は“壁”にもぶち当たったが、2軍で意識高く取り組み続けた。背番号「42」の今後に期待が高まる。

(森大樹 / Daiki Mori)