2度の2軍降格から…井上朋也が「めちゃくちゃ変わった」 裏にあった野村勇との“会話”

井上朋也【写真:加治屋友輝】
井上朋也【写真:加治屋友輝】

井上朋也を変えた野村勇とのふとした会話

 陽が落ちたナイターゲーム後の室内練習場に、快音が響き渡っていた。「めちゃくちゃ変わりました。楽しいです」。充実した表情で語るのは5年目の22歳、井上朋也内野手だ。今、打撃で明らかな進化を見せている。

 今季、1軍では6試合で16打数3安打、打率.188。「投手と勝負ができていない」と小久保裕紀監督から厳しい言葉をかけられ、8月16日に今季2度目の2軍降格となった。しかしファーム合流後は13試合で打率.364、2本塁打(20日時点)をマーク。再昇格に向けて猛アピールを続けている。

 その変貌ぶりは首脳陣の目にも明らかだった。松山秀明2軍監督は「スイング自体が良くなってきたし、出るべくしてヒットが出ている」と、確かな裏付けのある成長だと評価する。活躍の裏には、先輩・野村勇内野手と1軍で交わした会話があった。そして、小久保監督から告げられた1軍再昇格の条件とは――。

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続きの内容は

・井上朋也を変えた野村勇の「シンプルな一言」とは
・小久保監督が井上朋也に告げた「再昇格の条件」
・井上朋也が今季「後悔していること」の真相

 考え方が変わったのは、シンプルな一言だった。1軍に帯同していたころ、最新鋭の打撃マシン「トラジェクトアーク」を打ちながら、野村に「どうやって打っているんですか?」と尋ねた。返ってきた答えは「前で打っている」というもの。この言葉が、井上の中で光明となった。

「『とにかく前』です。捉えるポイントを前にしています。それで追い込まれたら、もっと(ポイントを)前にするんです。普通は(ボールを呼び込むために)中に入れると思いますが、逆に前にします。その意識だけで、打った感覚がめちゃくちゃ変わりました」

 今まではボールを最後まで見て、引きつけて打っていた。しかし、捉えきれずにファウルになり、カウントも悪くなる。「自分がきつくなって、結局ボール球も振っちゃうんです」と、悪循環に陥っていた。

 野村からのアドバイスを聞いても、1軍の勝負のかかる打席では実践できなかった。しかし2軍合流後、新たな打法を試すと思った以上の感触を掴んだ。バットがスムーズに出るようになり、ボールを的確に捉える回数が増加。フォーム全体が良い形になり、「今、楽しいです」と本人も語った言葉につながっている。

小久保監督からの1軍再昇格の条件

 残るシーズンの目標は最終盤での1軍復帰。降格を告げられた日、指揮官からの言葉が最大のモチベーションとなっている。「落ちる時、小久保監督が『本当に打ちまくったら(1軍に)上げたる』と言われました。なのでまずは打ちます」。

 ふと今季の後悔を語った。「自分のやりたいことを貫き通せなかったんです」。春季キャンプでは、力まずヘッドを効かせるフォームに取り組んでいた。しかし、オープン戦で結果を求めてしまい、すぐに元のフォームに戻してしまった。「でも今は試合で試し続けて、生まれ変わった最高の状態で(1軍に)行けるようにしたいです」と力強く語った。

 誰にも文句を言わせない圧倒的な結果を残し、再び1軍の舞台へ。掴み取った新しい感覚を武器に、チームの日本一へ貢献する日を目指す。

(森大樹 / Daiki Mori)