大野稼頭央、笑顔の今季初先発「よっしゃ来たと…」
久々の先発マウンドで、進むべき道が再認識できた。「めちゃくちゃ楽しかったです。先発が決まった時は『よっしゃ来た』と思いました」。“今季初先発”を笑顔で振り返ったのは、大野稼頭央投手だった。
15日にタマスタ筑後で行われたウエスタン・くふうハヤテ戦。武田翔太投手が先発を回避したことで、21歳左腕に急きょ出番が巡ってきた。“チャンス”をものにしようと懸命に腕を振り、3回を1安打1四球無失点に抑える快投を披露した。
倉野信次1軍投手コーチ兼ヘッドコーディネーター(ヘッド)からは「将来的には先発も」と期待を寄せられる左腕。試合後には「先発で勝負したい気持ちは変わらないです」と改めて口にした。今季初めて上がったまっさらなマウンド。「野球をやっているな……」。思わず笑みがこぼれた瞬間があった――。
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続きの内容は
・大野投手が語る、先発で「野球の楽しさ」を感じた瞬間とは
・松山監督が指摘する、大野投手の「今後の課題」と成長の鍵
・大野投手が憧れる、あのメジャーリーガーの投球術とは
「あのボールは中継ぎだったら絶対に投げていない球」。大野が口にしたのは2回2死走者なしでの投球についてだった。フルカウントから直球を3球続け、ファールで粘られた後に投じた105キロのスローカーブ。結果は四球となったが、左腕はあえて印象に残っている一球に挙げた。
「中継ぎなら速いフォークとかの変化球で押そうとすると思うんです。先発だと、不思議と『こうしなきゃ』という制限がなくなって、自分で考えながら野球をすることができるんですよね。『野球をやっているなあ』という感覚で本当に楽しかったです」と頬を緩めた。
松山秀明2軍監督が「彼のいいところは緩急」と語るように、140キロ後半の直球に130キロ台のパワーカーブと100キロ台のスローカーブを織り交ぜ、相手打者に的を絞らせなかった。小笠原孝2軍投手コーチも大野の投球に「初回、2回は良い時のボールに近かった。ゾーンを広げ、緩急を上手く使って強いボールを投げ込めていた」と評価した。
半面、3回には“悪い癖”も顔を覗かせた。無意識のうちにフォームが横ぶりになり、直球のスピードが140キロ前半に落ちた。「安定して強いボールをたくさん投げられないと。そこをクリアしていければ、いいピッチャーになっていくとは思います」と松山監督も今後の課題を口にした。
不調から戻した原点回帰
今季は2軍で32回1/3を投げ、43奪三振(19日終了時点)。奪三振率11.97と際立った数字を残している。9月には自己最速の150キロをマークするなど状態は上向いていたように見えたが、3日の阪神戦と7日のオリックス戦で2試合続けて本塁打を浴びた。「球速は出ていてもボールに力がなかった。低めに集めようとしすぎて、持ち味の直球で空振りが取れなくなっていた」。
的確な自己分析だった。ゾーン内に力強いボールを投げ込もうと意識したことで、直球の威力は“復活”。再び空振りを奪えるようになった。
先発をやっていくため、左腕が課題に挙げたのは「意図のないボール球をなくすこと」だった。「1イニング平均15球の中で無駄な球が多い。次に繋がる球ならいいんですけど、ただの無駄球は減らしたいです。そうすればより長いイニングの投球につながる」と前を向いた。
同じ左腕として憧れるのは、今季限りでの現役引退を発表したドジャースのクレイトン・カーショー投手。「カーブでタイミングを外し、最後は強い真っすぐで仕留める。打者をいなすような、あんな先発投手になりたい」。久々の先発で得た収穫と課題。背番号「60」のこれからにワクワクが止まらない。
(森大樹 / Daiki Mori)