松本裕樹が隠さない“勲章”への思い 「取れるものなら」…言葉に詰まったプライド

松本裕樹【写真:栗木一考】 
松本裕樹【写真:栗木一考】 

残り14試合で「4差」…昨季は中盤までトップも

 シーズンも最終盤に突入し、優勝争いとともに白熱しているのがタイトル争いだ。松本裕樹投手はここまで2位のオリックス・ペルドモに4つの差を付ける36ホールドでリーグトップに立っている。

 現在は球界を代表するセットアッパーとなった松本裕だが、昨季までのプロ10年間はタイトルとは無縁だった。昨季はシーズン中盤までホールド数でリーグトップに位置していたが、7月以降は抑えに回ったことでタイトルには手が届かなかった(23ホールド、14セーブ)。プロ野球人生で初めて目前に迫ったチャンスに右腕は何を思うのか。「狙えるのであれば」――。明かしたのはリリーフとしての矜持とプライドだった。

「取れるものなら取りたいです。やっぱりここまで積み重ねてきたものではあるので。相手チームの選手の状況もありますし、どちらにせよこっちで操作できるものではないので。自分はやることをやるだけです」

 初戴冠への意欲をキッパリと口にした背景には、これまで歩んできた道のりが色濃く表れている。2014年ドラフト1位で入団し、当初は先発投手としての大成を目指してきた。その後は年月を重ね、今はリリーフとして自らの確固たる地位を築いた。選手としての“勲章”であるタイトル獲得への思いは人一倍強い。

46試合登板で防御率0.99…「やることやるだけ」

 もちろん、松本裕の意識は自らにだけ向いているわけではない。ホールドという記録は僅差の試合展開で登板をすることによって積み重なる。自身の投球がチームの勝敗を大きく左右することは重々理解している。

「ホールドに関しては、自分がいいピッチングをすれば増えていくものなので。そこがタイトルを狙える数字にまで届けば、それだけチームの勝ちにはつながっているのかなと思います」

 その言葉通り、今季はチームのために黙々と腕を振り続けた。登板数は杉山一樹投手、藤井皓哉投手に次ぐ3番目の46試合。防御率0.99と驚異的な数字を残している。今シーズンからブルペンで試合展開をなるべく見ないようにするルーティンを取り入れ、自然体でマウンドに上がり続けていることが功を奏している。

「タイトルよりもチームの勝利」と語る選手も多いが、タイトルへの強い思いは自分がこなしてきた仕事に対するプライドの表れでもある。チームにとっても、そして松本裕自身にとっても残るは14試合。ホークスの最大の武器ともいえるリリーフ陣の柱として、最後まで戦い続ける。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)