野村勇を襲った“最悪の目覚め” 「怖かった」…わずか3日後に成しえた汚名返上

オリックス戦に出場した野村勇【写真:栗木一考】
オリックス戦に出場した野村勇【写真:栗木一考】

ビックイニング呼び込む適時打

 食事は喉を通った。眠りにもつけた。それでも脳裏から“悪夢”を消し去ることはできなかった。自らが犯した痛恨のミスは、自らの手で取り返すしかない――。野村勇内野手の思いがバットに乗り移ったかのような一打だった。

 14日のオリックス戦(京セラドーム)、0-3で迎えた6回1死一、二塁の場面だった。野村が山岡の直球を捉えた打球は、鋭く三塁線を破った。この試合初得点をたたき出すと、ここから打線がつながり一挙4得点で逆転に成功。猛攻の口火を切った28歳はベンチに向けて右手の人差し指を高々と掲げた。

「とにかく甘いボールを積極的にスイングしようと思いました。チャンスを生かすバッティングができて良かったです」。そう口にした野村にようやく戻った笑顔。2度の送球ミスが重なり、チームも敗れた11日のロッテ戦(ZOZOマリン)。野村が明かしたのは、一夜が明けた朝に抱いた率直な思いだった。「落ち込んだ? もちろんです」――。

「眠れはしましたけど、朝起きたら嫌な気持ちになっていましたね。『俺、昨日エラーしたんや』って。まあ誰でもなるとは思いますけど、もちろん落ち込みました」

11日のロッテ戦に出場した野村勇【写真:小池義弘】
11日のロッテ戦に出場した野村勇【写真:小池義弘】

「普通に過ごしました」も拭い去れなかった不安

 プロ野球選手として、ミスは常に隣り合わせだ。“最悪の目覚め”となった12日も、移動日になった13日も「特別何をするわけでもなく、普通に過ごしました」と明かす。「切り替えるしかないなと思いました」。野村はそう強調したが、そう簡単に負の感情を消せるわけがなかった。

「ちょっと昨日(13日)も怖かったですけどね。試合前の練習でも、試合でも」。13日の同戦は代走で途中出場し、そのまま三塁守備に就いた。9回にはゴロをしっかりとさばいたが、不安は常に頭にあった。

 迎えた14日の試合。「あの日」以来となるスタメン出場で遊撃を守った。5回2死では西野の難しいバウンドの打球を逆シングルで捕球すると、しっかりと一塁に送球しアウトを奪った。その流れが6回の逆転劇につながった。

 今季は開幕から1度も登録抹消されることなく、ここまでキャリアハイと呼べる成績を残してきた28歳。忘れられない悔しさを味わった分、より成長できる。失意の夜からわずか3日後に成しえた汚名返上。野村勇は強い。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)