川瀬晃が見せた“主役級”のプレーに「野球の神様が…」 首脳陣が絶賛した理由

満塁のピンチを救う好捕のあと、周東佑京とハイタッチする川瀬晃(左)【写真:小林靖】
満塁のピンチを救う好捕のあと、周東佑京とハイタッチする川瀬晃(左)【写真:小林靖】

7番・二塁でフル出場…ベテラン2人に負けない“輝き”

 粘り強く逆転勝ちを収めた2日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)。値千金の適時打を放ったのは中村晃外野手と今宮健太内野手だった。ホークスを長年支えてきたベテラン2人が主役となったゲームで、“影のヒーロー”となったのは「7番・二塁」でフル出場した川瀬晃内野手だった。

 まずは1点ビハインドで迎えた4回2死満塁のピンチ。廣岡のハーフライナーをジャンプ一番でつかみ取った。打球が抜けていれば2点を加えられていたであろう場面での好捕でチームを救うと、7回に先頭の栗原陵矢内野手が二塁打でチャンスメークした場面ではきっちりと犠打に成功。続く中村の同点打をお膳立てした。

 2つのプレーは確かに“最高難易度”ではなかった。それでも、奈良原浩ヘッドコーチは真剣な表情でこう口にした。「野球の神様が微笑んでくれたんだと思います」――。この言葉が大げさではない理由とは。

「あのハーフライナーは簡単そうにも見えるけど、実はそうじゃない。『カーン』という打球じゃなくて半詰まりだから。(打球が)来たと思ってジャンプしたら、思ったよりも来てなくて、自分が落下していく時に(頭上をボールが)通過する可能性があるんですよ。あれはファインプレーです」

4試合ぶりの先発に「今はより大事にしている」

 現役時代は名手として鳴らした奈良原ヘッドコーチだからこそ分かる“プロのプレー”。チームは2連敗を喫していた中で、この試合も敗れれば結果的に日本ハムとのゲーム差は0に縮まるところだった。犠打についても「あそこは100%送りバントのケース。難しかったと思いますよ」と解説した。

 川瀬自身がグラウンドに立つのは8月26日の楽天戦(弘前)以来、4試合ぶりだった。想像を絶するプレッシャーに加えて、久しぶりの出場。普段通りのプレーをする難しさを認めつつ、明かしたのは確かな自信だった。

「もちろん緊張はしますけど、そこはもう本当に練習するしかないというか。練習でできないことは試合で絶対にできないので。試合前の練習を今はより大事にしているというか、ノック一つにしてもしっかりと声を出すとか。練習をしてるからこそ、自分に『大丈夫』って言い聞かせながらやるしかないので」

 川瀬がたくましくなったのは、中村と今宮の存在があったからだ。「僕自身、本当にチームを引っ張っていかなきゃいけないので。きょうの晃さんや今宮さんみたいに……。そういう立場にならないといけないというか、なりたい。その気持ちは強く持っています」。

 奈良原ヘッドコーチはこう強調した。「(川瀬)晃の場合はもう普段の練習の賜物だと思いますよ。普段から練習をやっている人は、僕たちも信頼したくなっちゃうので。なんとなく勝利の女神じゃないけど、野球の神様が微笑んでくれるような気がするから」。純粋に野球を愛し、野球に愛されている男が、この日の“助演男優賞”だった。

(長濱幸治 / Kouji Nagahama)