100本塁打&400犠打のダブル達成は史上初
球史に名を刻む偉業を成し遂げた。27日の楽天戦(秋田)、今宮健太内野手が史上4人目となる通算400犠打を決めた。一足先にクリアしていた通算100本塁打と400犠打のダブル達成は誰もが成し遂げたことのない快挙。繊細な技術とパンチ力を持ち合わせた今宮だからこそ成しえた数字だった。
「ここ最近の野球ではバントが少なくなってきていますけど、本当にバントがなかったら多分ここにも立っていなかったのかなっていうくらい、始まりはそこだったので。達成できて良かったなと思います」
積み重ねてきた犠打の数だけ、自身は安打を打つ機会を手放してきた。もし自由に打席に立てていれば、通算1404安打の数字はもっと増えていたかもしれない。まさに字のごとく自分を“犠牲”にしてきた。そんな姿勢に敬意を示したのが本多雄一内野守備走塁兼作戦コーチだった。「なるべくして健太が作った記録かな」――。
「もうね、僕が経験していないので。これはもう本当に練習の賜物だと思います。これまで彼が積み上げてきた技術やメンタルの強さ……。そういったものがあったからこそ、なるべくして健太が作った記録なのかなと思いながら見ていました」
振り返った過去「最初は本当にできなかったです」
れっきとした主力になった今も、試合前のバント練習を欠かさない。1つの犠打に対しても、球団アナリストが出してくれた相手投手の球種や配球傾向をしっかりインプットして打席に臨む。まさにプロフェッショナルという言葉が相応しい男だ。
自身も現役時代、通算243犠打を積み重ねてきた本多コーチ。最も強調したのは、今宮の“フォア・ザ・チーム”の精神だった。
「犠打じゃなくて打ちたい。そういう気持ちがほんの少しでもあったら、決して400犠打は達成していなかった思います。健太の犠牲心やチームを見る目、自分が背中で引っ張っていこうという思いは、他の選手にも伝わっている。ずっと我慢し続けてきた健太が出した“答え”でもあるので。いい時ばかりじゃなくて、キツい時や結果が出ない時でも、しっかりと自分を見つめ直したことの積み重ねじゃないですか」
前人未到の偉業を成し遂げた今宮はあくまで冷静に振り返った。「最初はね、本当にバントできなかったです、1年目、2年目の時から2軍でしっかり練習して。で、3年目に初めてバントをした時に、きれいに決まったのから始まったんで。本当に1つの成功からここまで来たなと思います」。
大きな節目にたどり着いた34歳の目線はもう先を見据えている。「もう後は打つことです。今は散々なんで。まあ、守りとバントだけじゃ(これから先は)やっていけないので。しっかり打てるように。打ちたいです」。今宮健太の存在価値を示すため、チームも個人も優勝まで突き進む。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)