初昇格の翌日もともにした朝食
26日の楽天戦(弘前)、7回のマウンドに上がったのは移籍後初登板となった上茶谷大河投手だった。昨秋の現役ドラフトを経てホークスに加入した右腕はこの日、今季初の1軍昇格。すぐに登板機会が巡ってきた。先頭打者に安打を許したものの、後続を一邪飛と一ゴロ併殺に仕留め、わずか6球で3人を片付ける上々のデビューを飾った。
バッテリーを組んだのは、6回の守備から途中出場していた谷川原健太捕手だった。今季の開幕戦ではスタメンマスクを任されたものの、4月7日に登録を抹消。その後は2か月半もの間、2軍生活を余儀なくされた。その間にファームでともに汗を流してきた相手こそ、右肘の手術から1軍を目指していた上茶谷だった。
過酷なリハビリを乗り越えた右腕が、ようやくたどり着いた1軍のマウンドは青森・弘前の地。忘れることのできない1日となったが、その朝に2人はいつもと変わらない“習慣”を続けていた。「すごく特別な思いがあります」――。谷川原が胸に抱いていたものとは。
「僕が誘いました。『アサイー行きますよね?』って聞いたら、『当たり前でしょ』みたいな感じだったので。新潟遠征の時に食べたのがきっかけで、そこから行くようになりました」
上茶谷との“ルーティン”を明かしたのは谷川原だ。2軍遠征を機に、一緒にアサイーボウルを食べるようになり、今でも店の情報を交換し合っているという。上茶谷も「ファームの時からよく行っていて、アサイー巡りみたいな感じです。健康的でしょ」と笑う。初昇格しても、2人の習慣は変わらなかった。
2軍で生まれた“アサイー仲間”
ただ仲が良いだけではない。本職でも2人は常に会話を重ね、互いを刺激しあってきた。「1軍の試合を見て、『俺たちも活躍したいな』という話もしていましたね。モチベーションを上げ合う感じでした」。谷川原はそう振り返る。
そんな中で迎えた26日の試合。「ファームで一緒にやっていた仲間なので、絶対にゼロで抑えるっていう気持ちと、かみちゃさんの良いところを出してアピールしたいなと思っていました。3人で打ち取れて嬉しかったです」。ダブルプレーで3アウト目を取ると、谷川原は自然と拳を握りしめた。
谷川原が知る…真摯さと“ギャップ”
リハビリ中からムードメーカーとして大きな役割を果たしてきた上茶谷だが、谷川原が見てきたのは野球に対する右腕の真摯な姿勢だった。「本当にめちゃくちゃ色んなことを考えてやっています。ちょっと打たれたりしてもマウンドで感情を出したりするので、ギャップを感じることもあります」。真剣に打者と向き合うからこそ、あふれ出る感情。その思いを知るからこそ、無失点で終えたいと強く願えた。
谷川原自身も途中出場ながら2本の安打を放った。「積み重ねだと思うので。やれることをやろうと思って打席に入りました」。大差の試合でも集中力を切らさなかったのは、苦しい時を共に乗り越えた仲間の存在があったからだ。次は2人でチームの勝利に貢献する――。敗れはしたものの、そんな活躍を期待させる1日となった。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)