小久保監督「ものすごく輝いていましたね」
11日ぶりにマスクをかぶった28歳が確かな存在感を示した。16日のロッテ戦(みずほPayPayドーム)、0-7と大量リードを許した5回から途中出場したのが谷川原健太捕手だった。「しっかり準備はしていたので」。その言葉通り、4人のリリーフ陣を力強くリードし、スコアボードにゼロを並べた。
6回には二盗を試みた藤原を正確なスローイングでタッチアウトにし、2度回ってきた打席ではともに安打をマークした。「谷川原は第3捕手として今組む先発投手がいない中で、途中から出て2安打で盗塁も刺してね。ものすごく輝いていましたね」。試合後、小久保裕紀監督も“ベタ褒め”するほどの活躍ぶりだった。
今季は開幕戦でスタメンマスクをかぶったものの、4月上旬に登録抹消。2か月半ほどの2軍暮らしを経て、6月20日に1軍へ戻ってきた。久しぶりに訪れた出場機会で見事にアピールした谷川原だったが、試合後に語ったのは自らの“功績”ではなかった。
「3連戦の2試合目だったので。明日につながるようにというか、そういうことを色々考えながらやったりしました」
自分がマスクをかぶった時にはゼロで抑えたいという思いよりも、優先したのは次の戦いへの“布石”だった。「3連戦の最後だったら、あまり気にせずにピッチャーが投げたい球を投げさせたり、しっかり抑えることを意識するんですけど。明日もあるので」。あえて相手に打たせることはないが、極端な攻めで打者に強い印象を与えるような“撒き餌”も頭に入れながらのリードだったことを明かした。
高谷コーチも高評価「やるべきことこなしてくれた」
一方で、7回以降は全力でロッテ打線を抑えにかかった。そこには2軍での日々で得た学びがった。「7、8、9回に点を取られると、次の日の初回から相手に流れが行きやすい、バタバタするぞっていうのを下にいるときに聞いていたので。そういう意識も持ってやったら、いい結果が出たので良かったです」。
現在の1軍には自身のほかに海野隆司捕手、嶺井博希捕手がいる。定位置争いという面でライバルなのは間違いないが、試合になれば別だ。試合前のバッテリーミーティングでは先発だろうがベンチスタートだろうが関係なく、全員で試合のプランを話し合う。
「誰が出ても、チームが勝つために投手と協力してゼロを並べるという目的は一緒なので。『キャッチャー3人みんなで抑える』という思いでやっています」
高谷裕亮バッテリーコーチも谷川原の奮闘ぶりを評価した。「もちろん大差で負ける試合がない方がいいんですけど、年に何回かは起こりうるので。そういう展開でもやるべきことをしっかりとこなしてくれたと思います」。
自分のためではなく、チームのために――。言葉にするのは簡単だが、それを実践するのは容易ではない。大量ビハインドの中でマスクをかぶった谷川原がきっちりと果たした“仕事”。それはチームにとって大きな役目だった。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)