自身8連勝で一気に到達「1つの通過点として」
左腕の人生を大きく変えた出来事から3年――。ようやく先発投手としての“勲章”を手にすることができた。「やっぱり、そこは素直にうれしいですね」。11日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)で、自身初の2桁勝利を挙げた大関友久投手は穏やかな笑みを浮かべた。
初回、いきなり万波に先制ソロを浴びたが、動じなかった。「3回くらいから、より自分のやるべきことを明確にできたことが大きかったと思います」。同一カード3連敗だけは絶対に阻止しようという相手の気迫に押されることなく、丁寧な投球でゼロを並べた。5月17日の楽天戦(同)から破竹の自身8連勝で、一気に2桁勝利に到達した。
「シーズンはまだ終わっていないので。これを1つの通過点として、また次に向かっていきたいです」。試合後の各社囲みではこう話していた左腕。それから約2時間後、球場を後にする際に語ったのは、大関らしい喜びだった。
「もちろん自分としてもうれしいですけど、それよりも2桁ってみんなが喜んでくれることの方がもっとうれしいですね」
2022年7勝、2024年8勝…あと一歩届かなかった2桁
プロ3年目の2022年、開幕から順調に白星を重ね、球宴前までに6勝を挙げた。シーズン10勝も見えていた中で、8月に精巣がんの手術を受けた。「自分(の人生)はそんなに長くないのかもな」。命と静かに向き合った時間。家族や友人、チームメートの支えが何よりの力となり、9月下旬には再びグラウンドに戻った。
2022年は7勝、2023年は勝ち星に恵まれず5勝に終わったが、2024年は8勝を挙げた。届きそうで届かなかった2桁勝利。先発投手として大きな目標の1つとなる数字に到達した左腕が口にするのは、感謝の2文字だ。
「野球って面白いスポーツだなと思うんですけど、自分がどれだけいいピッチングをしても、自分の力だけじゃ勝ち星はつかめない。1つの白星を得るためには、チームメートの力が絶対に必要なんです。今改めて思うのは、本当にいろんな方に感謝したいなと。それだけです」
もちろん、ここがゴールではない。「まだまだ目指すところは先というか、もっともっといいピッチングをしていきたいので。まさしく通過点にしていきたいなと思います」。チームも、そして大関自身もさらに厳しい戦いが待っている。
今や小久保監督から3本柱の一角として名前を挙げられ、「チームの中心の1人です」と全幅の信頼を置かれるようになった。「ここからの戦いは本当に大事になってくる。一つ一つ、しっかりと準備して臨むだけです」。周囲のサポートを力に変え、これからも“みんな”を喜ばせてみせる。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)