前田純に起きていた異変「勝手にブレーキが」 リハビリ組に合流…本人が明かす現状

リハビリ組に合流した前田純【写真:竹村岳】
リハビリ組に合流した前田純【写真:竹村岳】

好投直後にリハビリ組へ…「悔しさはあります」

「悔しさはあります」。8日、リハビリ組の練習に前田純投手の姿があった。今季は自身初の開幕ローテ入りを果たした育成出身の25歳左腕。その表情には、もどかしさが滲んでいた。

 6度目の登板となった5月15日の西武戦(みずほPayPayドーム)で待望の今季初勝利を挙げると、6月4日の中日戦(みずほPayPayドーム)では8回無失点の快投で2勝目をマークした。しかしその後の2試合で結果を残せず2軍降格。再昇格を目指して、調整を続けていた。

 直近の2軍での登板となった7月26日の中日戦(ナゴヤ球場)では5回3安打1失点の好投で、今季2軍での初勝利をあげた。投球結果とは裏腹に、数日後、前田純の姿はリハビリ組にあった。突然起きた“異変”とは――。本人とコーチに現状を聞いた。

「(中日戦で)球速が全然出なくて『おかしいな』って……。一応交代しておくかという話を(コーチと)して代わりました」

 本来が130キロ後半から140キロ前半を計測する直球が、130キロ台前半に留まった。体が明らかに危険信号を発していた。「投げるときに肩が固まっている感じがして、勝手にブレーキがかかっちゃったんです。痛みはなかったんですけど……」。明らかに普段の登板とは異なる“違和感”に襲われた。

 小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)から「肩、肘への蓄積とかもあると思うから」と話があり、病院での検査も経て、リハビリ組へ合流した。離脱理由を「左肘の炎症」と森山良二リハビリ担当コーチ(投手)も明かした。

「押し切ろうと…」自然と生まれていた“力み”

6月19日に1軍登録を抹消され、約1か月半。2軍では“力み”を課題として、小笠原コーチと二人三脚で取り組んできた。手ごたえをつかみ、「もう一度、1軍へ上がるぞ」と思っていた中での出来事だった。

 1軍の先発マウンドでは、「力で押し切ろうとしていた部分があった」と本人は振り返る。本来の持ち味は“パワフルな投球”というよりは、直球とカーブの緩急を生かし、タイミングの取りづらさで勝負するタイプ。そこから逸脱した“力み”が「肘に負担がかかる投球フォーム」へと繋がっていた。

 この離脱は「見つめ直すいい機会なんじゃないか。自分はそういう投手じゃない」と再認識する“気づき”があったと語る。自分自身の武器は何か--。森山コーチも「それに気づけたなら、いいんじゃないですかね。でも(復帰は)まだまだです」と、この期間が成長の糧になることに期待を寄せた。

誓った完全復活「焦りはしないように」

目指すのは、もちろん万全の状態での復活。「焦って(故障を)繰り返すことが一番嫌なので」。逸る気持ちを抑え、冷静に先々を見据えている。

「ずっと試合のことを考えていたら、体の成長という部分が見えてこなくなる部分もあった。このリハビリ期間をトレーニングにも使えますし、早く(試合に)出ようと焦らないようにしています」

 次の登板では、一回り大きな姿でマウンドへ――。「ひたすらレベルアップするだけです」。左腕は力強く誓い、復帰を目指す。

(森大樹 / Daiki Mori)