自ら「腰は治ったって書いておいてください」
試合開始直前に配布されるメンバー表が“異変”を知らせていた。周東佑京内野手の欄には、ベンチ入りを意味する「〇」の印が付いていなかった。右腓骨の骨折から1軍に復帰した5月20日以降、試合を欠場することはあっても、ベンチを外れることはなかった背番号23。日本ハムとのデッドヒートが続く中で、“非常事態”が訪れたかに思われた。
試合後、球場を後にする周東の表情は想像したものと違った。「『腰は治った』って書いておいてください!」。7月31日の日本ハム戦、そして8月1日の楽天戦を欠場する原因となった腰の痛みについて、冗談ぽく笑い飛ばした。開幕から痛みと戦いながらプレーしてきた。誰よりも責任感の強い選手会長が見せた表情。それは今のチーム状態を映す“鏡”だった。
1日の楽天戦、試合前練習が行われていたグラウンドに背番号23の姿はなかった。報道陣の前に表れたのは、試合が終わった後のこと。「みんなとハイタッチして。(ベンチ裏で)色んな球場の試合を見ながら楽しんでいました」。ホークス戦と同時刻に行われていたオリックスと日本ハムの一戦は劇的なゲームとなった。「(サヨナラ弾を放った)頓宮すげぇなって思いながら見てました」。そう語る表情に“陰り”は見えなかった。
見据える勝負所「最後までこんな感じだと思う」
もちろん単に楽しんでいたわけではない。プロ野球選手として、選手会長として試合に出られないことへの思いは当然ある。腰の状態については「痛いっす」とキッパリ。本音をのぞかせつつも、「きょう(1日)病院に行ったんで。めちゃくちゃ改善されました」と症状が良くなっていることを明かした。
選手会長が明るさを失わないのは、ひとえにチームの状態が上向いてきた証だ。自身が試合に出られないことについて、周東はこう言い切った。「安心して見ていますよ。(シーズン)序盤もそうでしたけど、僕がいなかった時期もみんな頑張ってくれていましたし、『自分が出ていないからどうなんだろう』とも思わないです」。口にしたのは、チームメートの頼もしさだ。
それを感じさせたのは、この日の初回に先制2ランを放った近藤健介外野手の言葉だった。「佑京も頑張ってくれていますし、本当に体に鞭を打っていると思うので」。周東を気遣ったうえで、こう言葉を続けた。「僕ら(主力)が打たないと、優勝は近づいてこないので。若い選手が粘ってくれた前半戦でしたし、後半戦は僕やアグーさんとか、今いる主力が引っ張っていかないといけないと思っています」。
チームは日本ハムに1ゲーム差をつけて首位に立つが、周東はこう言い切った。「まだ8月1日なので。残り50試合くらいありますし、最後までこんな感じでいくと思うんです。1位だからとか2位だからとか関係ないです」。
まだまだ先にある勝負所。そこで本領を発揮するには、今は耐えなければいけない時期でもある。はやる思いを抑えさせるのは、確実に蓄えられてきたチーム力だ。周東の表情は、まさにそれを物語っていた。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)