首脳陣との会話、はっきりした「通用していない」 石塚綜一郎、明らかに違った2度目の降格

みずほPayPayドームでのくふうハヤテ戦に出場した石塚綜一郎【写真:森大樹】
みずほPayPayドームでのくふうハヤテ戦に出場した石塚綜一郎【写真:森大樹】

30日の試合で強烈な3ラン…2度目の降格で告げられた言葉は?

 2軍は29日からみずほPayPayドームでくふうハヤテとの3連戦を戦っている。2、3軍を主戦場としている若鷹にとっては“貴重な時間”。「めっちゃ悔しいっす。つい先日まで1軍にいて、今回は2軍選手としてのドームでの試合。僕の中で本当につらい、悔しい思いです」。こう振り返ったのは、22日に登録を抹消された石塚綜一郎捕手だった。

 30日の試合では、初回にレフトスタンドへ目が覚めるような強烈な3ランを放ったが、笑顔はなくダイヤモンドを一周。26日の中日戦(ナゴヤ球場)でも4打席4出塁と結果を残すなど、降格後もアピールを続けている。

 今季2度目となる登録抹消。石塚は「(前回とは)違いましたね」と、はっきりとした心境の変化を明かした。「今までやってきたことが全く通用しなくなってきている」。降格を言い渡された瞬間、自身の野球観が大きく変わったという。首脳陣から指摘されたのは、ある“変化”だった。「去年の方が……」。

「『また左(投手)を打ってこい』と言われましたし、『去年の方が球際は強かった。あっさり三振しているところが目についた』ともはっきり言われました」。

 実際、9日のオリックス戦(京セラドーム)では「5番・左翼」で先発出場するも、好投手・宮城大弥投手の前に第1打席は見逃し三振。第2打席も4球目の変化球にあっさり空振り三振。第3打席でも5球目のワンバウンドするスライダーにバットが空を切り、球界を代表する左腕に全く歯が立たなかった。

 石塚自身が課題と捉えているのが「2ストライクアプローチ」だ。投手に追い込まれた状況で打者が三振を避けるための打撃戦略だが、1軍レベルの投手を前にすると簡単に三振を喫してしまう。「2軍でのやり方が通用していない」と分析していた。

30日の試合で、レフトスタンドへ3ランを放った石塚綜一郎【写真:長濱幸治】
30日の試合で、レフトスタンドへ3ランを放った石塚綜一郎【写真:長濱幸治】

今回の降格で変化した思考法「はっきり別物だと…」

 そこで変えたのは、考え方そのものだった。「2軍で打てていて、1軍で打てないというのは、はっきり別物だと捉えるようになりました」。今回の降格を機に、意識を切り替えて練習に取り組んでいると明かす。

「実際、三振はしづらくなっているかなと思います。完全にノーチャンスな三振というか……。でも、その弊害で真っすぐをファウルにしてしまうこともある。2軍で結果を残さないと1軍に上がれないですけど、そこが難しいんですよね。2軍と1軍は、はっきり別で考えないといけないと思うようになりました」

 松山秀明2軍監督も「やっぱり1軍でどう打っていくかというところ。2軍では結果を出しているし、あとは1軍のピッチャーをどうやって打っていって、打率を残していけるかっていう段階になってきていますよね」と語った。「特に球速の速い左ピッチャーを打たないといけない」。1軍で打つための打席、と割り切った考え方で2軍での日々を過ごすようになっていた。

楽天戦で走塁死した石塚綜一郎【写真:古川剛伊】
楽天戦で走塁死した石塚綜一郎【写真:古川剛伊】

心に誓った「同じ失敗は2度としない」

“野球を知る”という意味でも、今回の降格は大きかったと振り返る。11日の楽天戦(楽天モバイルパーク)、2点を追う3回1死二塁。二塁走者だった石塚は中堅の定位置に飛んだ飛球で三塁を狙ったが、あえなくアウトとなった。小久保裕紀監督は「誰が見てもそうです。無理するところじゃなかった。感性を磨いてほしいですね」と厳しい言葉で指摘した。

「野球の勉強をもっとしないといけないって分かっています。野球脳を鍛えていかないといけないです」と石塚。打撃が持ち味であっても、守備や走塁で最低限のプレーができないことには出場機会を失い、本来の能力を見せることすらできなくなってしまう。「同じ失敗は2度としないと心に決めています」。そう心に誓った。

 29日の試合後、石塚は一番最後にドームを後にした。「今までは左ピッチャーを打つという課題だけでしたけど、今回は守備走塁でのミスもあり、打撃ももう1、2ランク上げないと1軍では出られないと分かった。課題が明確になりました」。そう語る表情は、どこか明るかった。次こそ、1軍の本拠地でホームランを――。誓いの一打を放つその日まで、挑戦は続く。

(森大樹 / Daiki Mori)