防御率0.00で降格 大野稼頭央が”3者面談”で突きつけられた課題…忘れられない「2球」

大野稼頭央【写真:古川剛伊】
大野稼頭央【写真:古川剛伊】

2度目の2軍降格、大野が監督室で告げられた課題

「頑張るしかないなという感じです。やっぱり後悔もありました」

“記録”には残らなかったが、そう口にした理由は明確だった。3年目の大野稼頭央投手が22日、今季2度目となる出場選手登録を抹消された。1軍デビューから4試合の登板で防御率0.00をマークしていたが、ファームからの再出発となった。

 21日の西武戦(ベルーナドーム)後に監督室へ呼び出された。小久保裕紀監督、倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)との“3者面談”。「あの2球が一番、自分の中で重いボールでした」。首脳陣から伝えられた2つの課題と、大野自身が語った“後悔”とは――。

「真っすぐをしっかり投げきる力と、決め球のカーブの精度とキレ。この2つを鍛えてこいという感じでした」

 突きつけられた課題は、大野自身も理解していたものだった。「自分でも変化球で空振りが取れていないことは分かっていました。制球面の課題もはっきり言われて、やっぱり周りから見ても分かっていたんだなと……」。20歳左腕が実力不足を痛感した、忘れられない2球があった。

「あんなにあっさり…」1軍での忘れられない経験

 1つは、12日の楽天戦(楽天モバイルパーク)での1球。3点ビハインドの6回2死一、三塁でマウンドに上がったが、村林に追い込んでから内角低めに投じたカーブをいとも簡単に中前へ運ばれた。自身に自責点はつかなかったものの、試合を決定付ける痛恨の適時打となった。

「ものすごく悔しくて。自分が一番自信を持っている球を、あんなにあっさりと打ち返されるって事が初めての経験でした。今の実力を一番思い知らされた1球です。『あの球だけは絶対に忘れないように』と思います」

頭が真っ白に「一番もったいなかった」

 17日のロッテ戦(北九州)も厳しい登板になった。同点の6回にマウンドへ上がった川口冬弥投手が2点を失い、なおも1死一、三塁のピンチで登板。安田に内角直球を右前に運ばれて1点を失うと、寺地には粘られた末に四球を与えた。満塁でソトにも押し出しの四球。「頭の中が真っ白になりました」。降雨コールドで6回の投球は記録に残らなかったが、大野にとっては屈辱だった。

 中でも安田に打たれた一打が記憶に深く刻まれていた。「1球目と似たようなコースに投げてしまいました。初球は大胆に投げた後、2球目はもっと厳しいコースを狙うことができていれば、打ちづらかったはずだと感じています」。

 これまでの4登板は、点差が大きく開いた場面がほとんどだった。勝敗を左右する緊迫した場面で、初めての登板。「自分の中で考えを複雑にしすぎて『厳しいコースへ、厳しいコースへ』と良い形で攻められませんでした。自分の持ち味を消してしまったのが、一番もったいなかったです」。メンタル面の課題も痛感した。

 コーチ陣からは「それが1軍だ。だからこそ、これを乗り越えろ」と励まされた。海野隆司捕手からも「いいボールは来ているんだから、自信を持って思い切り投げ込め」と何度も声をかけられた。この悔しさを糧に、より強くなって必ず“あのマウンド”へ戻ってくる。

(森大樹 / Daiki Mori)