球宴挟んで4戦連続マルチ…連続試合安打は「9」に
前半戦から後半戦に舞台が移っても、スイングの鋭さは変わらなかった。オールスター明け初戦となった26日のオリックス戦(みずほPayPayドーム)。1番・中堅で先発した周東佑京内野手は3安打を重ね、チームの勝利に貢献した。19日の西武戦から4試合連続のマルチ安打をマーク。連続安打は9試合に伸び、一時2割8分台まで落ちた打率も.307まで再浮上した。
右腓骨の骨折で1か月ほど戦列を離れたが、ここまで打率はリーグ3位、26盗塁はトップの数字だ。一見、安定した成績を残し続けているかに思えるが、本人は静かに首を横に振る。「頭では分かっているんですけど、どうしても体が早めに反応してしまっていた」。なかなか消すことができなかった“恐怖の残像”――。選手会長は人知れず、苦しんでいた。
「今シーズンに限っては頭に2回当たったり、右脚も死球を受けて骨が折れたりして。どうしても近めの球(インサイド)に対しての反応が……。頭では(もう少し待たなければいけないと)分かっているんですけど、体が早めに反応しちゃって。そこが一番大きかったですね。今は打席を重ねるにつれて、ようやく消えてきたのかなと思います」
4月23日のオリックス戦で死球を受けて右腓骨を骨折すると、実戦復帰となった5月17日の2軍戦では頭部に投球が直撃した。1軍復帰後も、6月10日の巨人戦で再び頭にデッドボールを受けた。2つの頭部死球に関してはその後も出場を続け、試合後には何事もなかったような様子を見せていたが、脳裏に刻まれた恐怖は残り続けた。
打撃コーチも感じていた異変「ほど遠い状態」
周東の打撃に陰りが生じていたのは、村上隆行打撃コーチも把握していた。「体が回らなくなっていたので。本来の形からは程遠い状態でした」。周東本人も重々理解はしていたが、体が思うように動かないもどかしさが募った。それでも、弱音を吐くことなくグラウンドに立ち続けた。
恐怖に打ち勝ち、再び状態を上げてきたことに大きな価値がある。初めて規定打席に到達し、シーズン打率.269をマークした昨季も、4月を終えた時点で打率.319とスタートはよかった。一方で5月以降は月間打率2割台が続き、盛り返したのはシーズン最終盤に入った9月になってからだった。
今季は6月に打率.247と苦しんだが、7月はここまで.324と再浮上を見せている。250打席を超えたあたりから数字を上げることができるのは、主力として安定した成績を残す必須条件ともいえる。「今年に関してはそこが一番いいのかなと思います」。常に「レギュラーとして」という言葉を口にする周東自身が最も手ごたえをつかんでいる。
「落ちるところまで落ちてからはすぐに上がれたので。毎年打てない時期が1か月とか続いたりしていたので。今年はその期間を短くできたというのがいいと思います」。頭にこびりついた残像を拭い去り、再び量産モードへと突入した選手会長。後半戦も先頭に立ってチームをけん引するのはこの男だ。
(長濱幸治 / Kouji Nagahama)