復帰の浜口遥大「不安はあった」 難病から再起へ…降板直後にも見えた“意識の変化”

3軍戦で復帰登板を果たした浜口遥大【写真:森大樹】
3軍戦で復帰登板を果たした浜口遥大【写真:森大樹】

1イニングを投げ無失点の好投

 ホークスでの新たな一歩を踏み出した。10日にタマスタ筑後で行われた愛媛マンダリンパイレーツとの3軍戦。浜口遥大投手が復帰登板を果たした。8回から登板し、1イニングを1安打無失点。最速142キロを計測した真っすぐをはじめ、10球を投げ込んだ。完全復活へ順調な滑り出しを見せた左腕は安堵の表情を浮かべた。

 昨年12月23日、三森大貴内野手とのトレードで、ソフトバンクに入団。4月に内視鏡下胸椎黄色靭帯骨化切除術と、国指定の難病である黄色靱帯骨化症の手術を受け、懸命にリハビリをこなしてきた。

 久々の実戦登板に「ちょっと違う緊張感がありました」と心境を明かす。明るく取材に応じた一方で、内に秘めたのは“不安”の感情だった。降板直後に“意識の変化”をうかがわせた行動とは--。

「一種の不安はありましたね。若い選手も含め、僕がどういう取り組みをして、どういうボールを投げるのかを見ていると思っていたので。ベテランになればなるほど、やっぱり練習に取り組む姿勢から、見ている人は見ていると感じていました」

 そう語ったのは、今年3月に30歳を迎え、ベテランとも呼ばれる立場になった自覚からだった。マウンドへ向かう際には「よっしゃ、行こう!」と後輩たちに何度も声をかけ、試合後には30分以上に及ぶ3軍のミーティングにも若手と一緒に参加した。

「リハビリだからといって、自分の好きなようにやるというのは、僕の中ではちょっと違うと思うので」。リハビリ期間中から積極的に声をかけ、若手の手本となる姿勢を貫いてきた。

 それでも「きょうはちょっと意識しすぎた」と振り返り、「次の試合では、もうちょっと自分のことだけに集中して、少し自分勝手に投げようかなと思っています」と笑顔を見せた。

支えとなった“存在”「本当に大きかった」

 復帰には通常3~4か月かかるとされていたが、実際には、ほぼ3か月かからずに実戦復帰を果たした。「2か月経った時点で1か月くらい前倒しになって、そこからさらに1週間くらい早まったんです。本当に、肘も背中も2人の先生が丁寧に手術してくれたおかげですし、リハビリの過程でもしっかり経過を話しながら進めることができました」。難病である黄色靱帯骨化症についても、「大きな違和感が出る前に手術ができたので、今は元どおりの生活ができています」と語った。

 リハビリ中は、同じ境遇にある“仲間たち”の存在も大きな支えになった。特に、DeNA時代からのチームメート・上茶谷大河投手の存在を強調する。「上茶谷がリハビリ組の雰囲気を良くしてくれていたのをすごく感じました。本当に大きかったと思います」。筑後の室内練習場では、明るい声がリハビリ組から聞こえていた。

「すごく明るいキャラクターの選手が多くて、色々ものを抱えながら、それでも毎日一生懸命できることをやっている姿を見てきた。不安はあまりなく、みんなで声をかけ合いながら、多少ふざけ合いながら、いいリハビリチームでできたと思います」

 今後は実戦登板を重ねながら、1軍復帰を目指す。「時期も時期なので、1試合も無駄にできないですし、とにかく全部の試合がアピールになると思う。内容はしっかり自分で高く設定して、最速で1軍で投げれるように準備はしたいなという気持ちです」。大きな壁を乗り越えて1軍のマウンドへ――。浜口遥大が大きな一歩を踏み出した。

(森大樹 / Daiki Mori)