2軍降格の秋広優人、小久保監督に告げられた言葉
「悔しさはもちろんありました」。3日、日本ハム戦(みずほPayPayドーム)の試合前練習終わりに監督室で2軍降格を告げられた。ソフトバンクに加入し、大きな期待を背負い1軍で過ごした約2か月。「チャンスをもらえていなかったわけじゃないので……」。秋広優人内野手が正直な思いを口にした。
5月12日に巨人からトレードで加入し、15日に1軍昇格。16試合でスタメン起用された。6月13日から15日のDeNA3連戦では移籍後初本塁打を含め、2試合で勝利打点をマーク。3日連続でお立ち台に上がり、強烈なインパクトを残した。
しかし同17日の広島戦(マツダスタジアム)以降は、14打席無安打に終わった。2軍降格時には小久保裕紀監督から“課題”も突き付けられた。喜びも悔しさも味わった22歳が思わず吐露したのは、パ・リーグの投手と対戦して感じた驚きだったーー。
「やっぱり途中から(試合に)出るような選手ではないので。レギュラーになるために何が必要なのか。小久保監督からは『改めて下で鍛えてこい』と。まずは動作解析を受けて、(データを見て)しっかり修正してきてほしいと言われました」
移籍後に即昇格し、1軍で2か月の日々を過ごした。度肝を抜かれたのは、パ・リーグ投手陣のレベルの高さだった。「やっぱり真っすぐのスピードや球の強さっていうのが、今まで対戦してきたピッチャーにはいないような感じでした」。プロ入り3年目の2023年シーズンに、1軍で10本塁打を記録した逸材ですら“壁”を感じた。
特に強烈な印象を受けたのが、移籍して間もない5月21日の日本ハム戦(エスコンフィールド)。相手先発、北山亘基投手のボールに対してだった。「めちゃくちゃ球が速かった。もうヤバいなと。衝撃でした」。1打席目から150キロ台中盤の直球を次々と投げ込んでくる。「もう、後ろの方(リリーフ)で投げるような球が最初から来るので……。そこからタイミングの取り方とか、打ち方を変えたりしました」。
それでもスタメン出場した試合では、3試合連続でヒーローを経験するなど、存在感を見せつける打席もあった。「落ち着く前に1軍で出させてもらったので、逆にそれが良かった。勢いというか、プレッシャーを感じる間もなく、のびのびと自分のプレーをやらせてもらえたかなと思います」と振り返る。「後半は苦しみました。やっぱり直球に差し込まれたり、まだまだ力不足だなと。しっかりと勉強して戻りたいと思います」。そう語る表情には、前を向く覚悟がにじんだ。
増えた代打起用…感じた“難しさ”
1軍の外野には周東佑京、近藤健介、そして今季交流戦MVPを獲得した柳町達ら強力な左打者が揃う。自然とベンチを温め続け、代打での起用も増えていった。代打では6打席で無安打。その難しさもあったという。
「1打席でしっかり結果を残さないといけない厳しさはありました」。周りの1軍選手たちに代打の心得も聞いたという。「スタメンで出る時も、何打席かは代打で出ているような気持ちで臨んだりもしていました」。試合に出ることの難しさと、1打席の大切さが身に染みた2か月だった。
「もちろん(筑後に)長くいたくないという気持ちはあります。やっぱり1軍でプレーするのがベストだと思うので。でもそう簡単にスタメンとはいかない思いますし、“1打席”でしっかり結果を残せる力を身に付けて、1軍に戻りたいと思います」。自らを厳しく律し、再び輝きを放つその日を目指している。
(森大樹 / Daiki Mori)