野村勇の覚醒は「ユニホームを見ればわかる」 首脳陣が証言した“昨季までとの違い”

ヒーローインタビューを受ける野村勇【写真:古川剛伊】
ヒーローインタビューを受ける野村勇【写真:古川剛伊】

4回に勝ち越し2ラン「少し上がり過ぎたかな」

 打球に執念が乗り移った。約1か月ぶりの一発が試合を決めた。6日の西武戦(みずほPayPayドーム)、同点で迎えた4回2死一塁。野村勇内野手が値千金となる勝ち越し2ランを放った。チェンジアップに少し泳がされながらも、左翼フェンスを軽々と超える決勝アーチで、チームを6カード連続の勝ち越しに導いた。「少し上がり過ぎたかなと思ったんですけど、いってくれました」と、お立ち台では爽やかな笑顔が弾けた。

 この日は「8番・遊撃」でスタメン出場。脇腹痛で離脱中の今宮健太内野手に代わり、川瀬晃内野手と共に遊撃のポジションを任されている。主力が離脱する苦境で巡ってきたチャンスを活かし、野村はバットでもグラブでも存在価値を証明し続けている。

「あまりスマートにやるんじゃなくて、がむしゃらにやりたい」。そう語る28歳の姿に、奈良原浩ヘッドコーチは目を細める。野村のがむしゃらさが伝わる“変化”について、こう証言した。

野村勇【写真:古川剛伊】
野村勇【写真:古川剛伊】

あふれる気概「スマートじゃなくてがむしゃらに」

「彼のユニホームを見れば分かるんですけど、ほぼ毎日汚れていますよ。もちろん塁に出ているから、というのもあるんだけど。塁に出ない日でも、守備で泥だらけになっている姿を見ると『あ、去年までの彼とは違うな』と思いますね」

 その言葉通り、野村の“躍動”は攻守にわたる。奈良原ヘッドは「あれだけのガッツあふれるプレーはなかなかできない。この後も続けてほしいと思いますね」と、期待を寄せる。そのプレーがチームに勢いと活気をもたらすからだ。

 首脳陣が感じ取っているのは、技術や姿勢の変化だけではない。内に秘めた強い意志だ。「『レギュラー陣が帰ってきてもポジションは空け渡さない』という気概を感じますよね」。相次ぐ主力の離脱で掴んだ好機を絶対に逃すまいとする気迫は、練習用のユニホームからも見て取れる。破れた箇所を何度も縫い直した跡が、その執念を物語る。

本塁打を放った野村勇【写真:古川剛伊】
本塁打を放った野村勇【写真:古川剛伊】

泳がされてもなお161キロを計測した打球速度

「色々変えるのではなくて、やってきていることの質を高めるだけ。特に変えたことはないんですけど、よりそこに集中しようかなと思います」

 この日の本塁打は161キロの打球速度を記録した。「体重移動がしっかりできましたし、ゆっくり振ってもあまりエネルギーロスがなかったのかなと思います」。本塁打は6月8日のヤクルト戦(神宮)以来だったが、その間も地力を高めてきたことは、泳がされながら放った一打が証明していた。小久保裕紀監督も「低めのボールを上手く引き付けて、前さばきみたいなホームランでしたね」と称賛した。

「全員が自分のやれることをしっかりやっている。その集合体で勝ててきている」。それが今のホークスの強さだと奈良原ヘッドは語る。その中心で、ユニホームを泥だらけにしながら輝きを放つ背番号99が、チームをさらなる高みへと導いていく。

(飯田航平 / Kohei Iida)