右腕3人が抱く「野望」…ピリつく空気 杉山&松本裕が明かす“日替わり守護神”の実態

松本裕樹、杉山一樹、藤井皓哉(左から)【写真:古川剛伊】
松本裕樹、杉山一樹、藤井皓哉(左から)【写真:古川剛伊】

小久保監督の信頼も絶大「高い確率で逃げ切れる」

 今、チームを支える頼もしい「3本の矢」が揃い踏みした。4-3で競り勝った5日の西武戦(みずほPayPayドーム)。1点リードの7回から登板したのが藤井皓哉投手、松本裕樹投手、杉山一樹投手の“勝利の方程式トリオ”だ。3イニングで計8奪三振と相手打線を圧倒した3人には、口には出さない“野望”があるという。

 シーソーゲームの展開となった試合は、6回に打線がなんとか1点を勝ち越した。7回からは必勝パターンの出番だ。まずは藤井がマウンドへ。8回の松本裕は得点圏に走者を背負ったが、3アウト全てを三振で奪い、ゼロを並べた。そして9回にはクローザーとして杉山が登板。圧巻の3者連続三振で虎の子の1点を守り抜いた。

「6回の時点で勝ち越せれば、かなり高い確率で逃げ切れると考えている」。小久保裕紀監督は3人の働きぶりに賛辞を贈った。ロベルト・オスナ投手が登録抹消となったことで、守護神はあくまでも“日替わり”。指揮官も「あしたは松本裕でいきましょうか?」と口にするほど、右腕トリオへの信頼は厚い。

 流動的なパターンでリーグ戦を戦う中、杉山はチームトップタイとなる8セーブ目を挙げた。“暫定守護神”となっている背番号40は、3人ならではのピリピリとした空気感を明かした。

藤井と松本裕に触発「火がつきましたね」

「それぞれがクローザーを狙っていると思います。(日替わりにすることで)なおさら相乗効果があるんじゃないですか。譲りたくないですね」

 5日の試合では藤井が2三振、松本裕が3三振を奪った。守護神を託された右腕も「2人が(相手打線の)流れを止めてくれたし、火がつきましたね」と、味方の投球にも触発されてマウンドに上がった。「三振は点が入るリスクが一番少ないじゃないですか。抑えが打たれてしまったら安心感もないし、締めるという意味でもバットに当てさせない方がいいと思っていました」。プロ野球選手なら誰しもが、より良いポジションを目指すもの。バチバチした3人の関係性が、この日の結果にも直結したようだ。

 ブルペンで出番を待っていれば、自然と顔を合わせる時間も増えていく。3人による会話は「めちゃくちゃレベルが高いと思いますよ」と杉山は明かす。データの活用法、相手打者の特徴、配球など内容は多岐に渡るという。「そういうところにいないと、自分も置いていかれますからね」。日々刺激をもらい、切磋琢磨しているところだ。

試合を締め括った杉山一樹と海野隆司【写真:古川剛伊】
試合を締め括った杉山一樹と海野隆司【写真:古川剛伊】

“日替わり”である理由を、松本裕も推察する。「3人の中でも、またタイプが違いますからね。誰かが苦手なところを僕が得意だったり、そういうところもあると思う。流動的であることが(いい方向にも)働いているんじゃないですか」。

 プロ11年目を迎えた右腕は、ここまで25試合に登板して6四球。優れた制球力と、豊富な球種を駆使するのが持ち味だ。一方で、藤井と杉山は直球とフォークを組み合わせるスタイル。三者三様の武器があるからこそ、相手打線の並びを見て“後出し”のように継投できるメリットがある。あくまでも順番を決めるのは首脳陣だが、松本裕は「もしかしたらそういう考えもあるんじゃないですか」と話した。

松本裕が語る“タイプの違い”…3人で補うポイント

 持ち味の違いという点に、杉山も同調した。「松本さんはいろんな変化球がある。藤井さんとは似ていますけど、僕はテンポも早いので。2人がいてくれるおかげでちゃんと投げられています」。小久保監督も、右腕のクイックモーションのスピードは守護神に適していると話していた。「9回は時間をかけるイメージがありますけど、もったいないじゃないですか」。相手打者に、考える時間すら与えない。チームを勝利に導けるよう、リリーフ陣も最善の準備をしている。

 藤井は常に「どこで投げても、僕たちの仕事はゼロで帰ってくること」と繰り返す。大きな期待を背負って“勝利の方程式”を担う3人。胸に秘める野望を、叶えるのは誰だ――。

(竹村岳 / Gaku Takemura)