前田悠伍が37回2/3連続無失点 首脳陣が“含み”…異次元の要求「試したいこともできない」

阪神戦に登板した前田悠伍【写真:竹村岳】
阪神戦に登板した前田悠伍【写真:竹村岳】

雨天ノーゲームを含めれば41回2/3を投げ無失点

 異次元の領域に足を踏み入れた。3日のウエスタン・阪神戦(タマスタ筑後)に先発し、5回無失点の快投を披露した前田悠伍投手。規定投球回に到達し、防御率1.07はリーグトップに躍り出た。常に“1軍レベル”の物差しで評価されるドラ1左腕。首脳陣に与えられた課題とどのように向き合い、今を過ごしているのか。

 この日も淡々とゼロを並べた。2回1死で原口文仁内野手にこの日初安打となる中前打を許すも、後続を三ゴロ併殺に仕留めた。5回1死では再び原口に安打を許したものの、続く打者を三直に打ち取ると一走が戻れずにゲッツー。5回をわずか63球で投げ切り、2安打5奪三振無四球。打者15人で仕事を終わらせた。

 左腕が最後に失点を喫したのは、4月11日のオリックス戦(京セラ)。以降は37回2/3を投げ、ゼロを並べ続けている。5月16日の阪神戦(タマスタ筑後)は雨天ノーゲームとなったが、この試合も4回無失点。合算すれば41回2/3を無失点と“無双状態”が続いている。驚異的とも言える内容は、どんな部分に要因があるのか。

「ここだというところで低めに投げることができています。それが、カウントを悪くしても抑えているところかなと。低めに投げる勇気があること、投球にメリハリがありますね」。評価の言葉を並べたのは、小笠原孝2軍投手コーチ(チーフ)だ。先頭打者に対してのアプローチや、ピンチの場面。要所で選択を間違えることなく、思ったコースに投げ込めていることが結果に繋がっている。「生意気ですよね」と首脳陣が笑うのも、19歳とは思えないパフォーマンスを見せている証拠だ。

5回の守備前…首脳陣があえて与えた“課題”

 4回を終えた時点で相手に許したのはわずか1安打。5回のマウンドに上がる前に小笠原コーチからの指示を受けると、左腕はランナーのいない状況でもクイックモーションで投げ始めた。走者を背負った状況でどんな投球を見せるのか確認したかったものの、そもそもピンチにならない。「試してほしいこともできずにいましたから」と小笠原コーチは目的を明かしたが、それほど高次元な領域にいることは間違いない。

「ただ、1軍だと許されないこともある。そこの徹底を今やっているところです」。高卒2年目とは言えども、もう立派な戦力の1人。1軍を想定した投球を、常に首脳陣も求めている。「『高い、低い』だけじゃなくて『何センチ高い』っていう言い方をしています。そのレベルです」。小笠原コーチは5回63球で交代させたことについては「まあまあ、いろいろと。暑さもあるし。話しながらです」と説明。明らかに含みを持たせた言い方だった。

 この日、1軍では松本晴投手が7回14奪三振の投球を見せた。有原航平投手とリバン・モイネロ投手を中心に回っている先発ローテーション。倉野信次1軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)は常々、「勝つ確率が高い方を選ぶ」と話しているが、前田悠も次なる候補として結果を出し続けている。2軍のコーチ陣も課題を与えながら、モチベーションを失わせないように試行錯誤しているようだ。

高卒2年目の19歳がキッパリ…キャリアは「関係ない」

 前田悠自身も「もしかしたらあるかも」と、1軍のマウンドを現実的に感じているところだ。圧倒的な結果を出している中で「『19歳だから』『2年目だから』とかは関係ないです。結果を出したら上に行ける世界なので」と、遠慮するつもりは全くない。自分の力でチャンスを掴もうと、最大のアピールを続けている。「突き詰めてやっていきます」という左腕。油断することなく、これからもゼロを並べていく。

「褒めると調子に乗りますから。そうだよな?」。小笠原コーチは、隣にいた重田倫明広報に問いかけた。「本当にそうです」。そんな話にもなるほど、背番号41の存在はポジティブな要素だ。1軍が勝つために、前田悠伍に声がかかる日はきっと遠くない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)