降板後に枯れた声「貢献したい」 大関友久の“理想像”…純朴な願いと健気な姿勢

降板後もベンチで声を出す大関友久【写真:古川剛伊】
降板後もベンチで声を出す大関友久【写真:古川剛伊】

7回1失点で降板…指揮官も「勝ちをつけたかった」

「本当に勝ってほしいと思っていました」。味方を応援する姿が、最後の最後で報われた。2-1でサヨナラ勝利を収めた2日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)。先発として最少失点でしのぎ、勝つためのチャンスを作ったのは大関友久投手だ。祈るように見つめたグラウンド。ベンチで声を枯らしていたのは、自らの“理想”を追い続けるためだった。

 立ち上がりにピンチを招いた。先頭の吉田にヒットを許すなど1死一、三塁とされ、野村を迎える。内野ゴロの間に三走が生還し、先制点を献上した。その後はテンポよくアウトを積み重ね、7回1失点でマウンドを降りた。小久保裕紀監督も「勝ち星をつけてやりたかったっていうのが本音ですね」と目を細める内容だった。

【尻上がりに調子上げ】大関友久『勝ち負けつかずも…劇的勝利に繋ぐ7回106球9奪三振!』【動画:パーソル パリーグTV】

 相手先発・加藤の前に、打線は8回まで無得点。1点が遠い展開の中で左腕は106球を投げ抜き、今季自己最多の9三振を記録した。降板後も、ベンチで声を枯らす姿が何度もテレビカメラに映されていた。心から味方を応援する。純粋な姿に、大関の“理想像”が現れていた。

「自分の理想の投手像、野球選手像みたいなものがやっぱりあるんです。その姿でありたい、近づきたいなって思うので。『それならこういう行動をしよう』っていう気持ちはあります」

 先発投手の出番は週に1回。マウンドを降りて、全ての役割が終わるわけではない。「まだまだできていないと思います」としたうえで「振る舞いだとか、そういうところにも集中してアプローチしたいと思っています」と言い聞かせる。ゲームセットの瞬間までチームを鼓舞するのが、大関が掲げる理想像だ。

「人それぞれだとは思いますけどね。僕はそういう選手になりたいと思っているので、行動にも繋がっていくのかなと。リアルタイムで試合をしている中ですし、本当にチームのために何かがしたいというシンプルな思いです。チームが勝つために声を出したい、マウンドを降りた後も少しでも貢献したい純粋な気持ちでした」

初回には味方の“ミス”も…マウンドで言い聞かせたこと

 初回1死二塁で水谷の打球は三塁を守る野村勇内野手のもとへ。グラブが届く範囲に見えたが、この当たりを逸らしてしまいピンチは広がった。大関は「イレギュラーもしていましたし。僕も初回の先頭、ヨーイドンで打たれたりもした。どんな状況になっても基本的にやることは同じだと思っているので」。自分がコントロールできることだけに集中する。いつも唱えている言葉を、ここでも思い出していた。

 2回以降も緊迫した展開は続く。味方の援護を待ちながら、必死にゼロを並べてみせた。交流戦でも優秀選手賞に輝き、6月は防御率0.78。この日の内容についても「すごく(状態が)良かったわけじゃない中で、こういう抑え方ができた。また新たな収穫というか、見つけられたものが多かったです。大切にしているポイントは出すことができたので」と納得の表情だ。首位・日本ハムとの重要な一戦で結果を出せたことも、今後の自信へと繋がっていく。

 山川穂高内野手が9回にサヨナラ打を放ち、試合を決めた。2点目の生還を巡ってホークスベンチがリクエスト。アウトの判定が覆るという劇的な結末だった。祈るように見つめていた27歳左腕は「本当に勝ってほしかったので。最後の場面はシビれました。最高に気持ちいい瞬間と言っていいくらい。そんな気持ちになりました」。興奮を思い出しながら、そう答えた。チームメートと掴んだ白星はいつだって格別だ。

「今からまた整理したいと思います」。帰路に就いた左腕は、濃密な振り返りをノートに記して残すはず。2025年シーズンも折り返し、残りは70試合。優勝だけを目指す大関の力が、これからもきっと頼りになる。

(竹村岳 / Gaku Takemura)