お立ち台の理由は“親父ギャグ”? 試合前にあった「伏線」 海野隆司が選ばれた舞台裏

お立ち台に選ばれた有原航平、海野隆司、中村晃【写真:矢口享】
お立ち台に選ばれた有原航平、海野隆司、中村晃【写真:矢口享】

有原航平&中村晃とともにヒーローインタビュー

 お立ち台選出の理由は、まさかの“親父ギャグ”だった。1-0で競り勝った1日の日本ハム戦(東京ドーム)。有原航平投手、中村晃外野手とともにヒーローインタビューを受けたのが海野隆司捕手だ。投打のヒーローに加え、完封劇を演出した27歳もマイクを握った。“3人目”はどのようにして選ばれたのか、舞台裏に迫った。

 有原と北山亘基投手が先発。両チーム無得点のまま試合は進み、6回にチャンスが訪れた。1死二、三塁で中村が右翼に打ち上げた犠飛が結果的に決勝点となった。。貴重な先制点を最後まで守り切った背番号17は「いいボールを投げられましたし、海野がいいリードをしてくれたかなと思います」と“相棒”に頭を下げた。

 今季初完封に加えて12球団勝利を達成した有原と、決勝打を放った中村。2人に加えてマスクをかぶっていた海野もヒーローインタビューに選んだ背景を、西田哲朗広報が明かした。

「晃さんは大事なところで犠牲フライを打ってくれました。ヒットではないんですけど、20周年のイベントだったので。(チームの)歴史みたいなところも少し話してほしいっていうのは事前にお願いをして、インタビュアーの方とも話をしていました。有原投手は12球団勝利。多くを語る選手ではないので、全体的なバランスも考えて、海ちゃんもいこうと決めましたね」

 この日は「ソフトバンクホークス誕生20周年デー in 東京」として開催された。プロ18年目、ホークス一筋でプレーしてきた中村の言葉で、球団の歴史もファンに届けたかった。海野については「満点の結果だったじゃないですか。完封ってなかなかできないことだし、それが一番の理由です」と西田広報。守備面での貢献はもちろん、バットでは1打数1安打で2つの犠打も決めるなど、内容は申し分なかった。

始球式に登場した反町隆史さん【写真:矢口享】
始球式に登場した反町隆史さん【写真:矢口享】

始球式に登場した超有名俳優がヒントに

 さらに、意外な理由も口にした。「始球式に反町さんがこられていたじゃないですか。名前の読み方が同じ『たかし』なので“たかしで始まりたかしで終わる”っていう僕のイメージもありました(笑)」。

 試合前の始球式に登場したのは、俳優の反町隆史さんだった。「新聞とかで使いやすいかなって思ったんです。反町さんの話も(お立ち台で)してほしかったんですけど、海ちゃんは『真面目に話してきます』と言っていました」。笑みを浮かべながら舞台裏を明かした西田広報。“大真面目”な理由だからこそ、細部までに考えを張り巡らせる広報の視点に驚かされる。

 海野自身も記憶を振り返った。「お立ち台って、2022年以来じゃないですか?」。3年前、6月25日の日本ハム戦(みずほPayPayドーム)で、大関とバッテリーを組んで完封勝利を挙げた。捕手の防具を着用したまま、ヒーローインタビューに応じた“あの時”だ。久々に味わった景色を「(スタンドに)人がいっぱいいましたね……。自分は何もしていないです。有原さんのおかげで立てました」と噛み締めた。

 捕手としての信条は「我慢」。準備を欠かすことなく、チームのために身を粉にしてきた。「有原さんが完封してくれたからです」。先輩右腕を盛り立てる言葉を何度も繰り返した27歳の姿は、どこまでも頼もしかった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)