取る気がなかったアウト…牧原大成が凌いだ1点” コーチが評価した「直後」のプレー

中堅へ抜けそうな打球をスライディングキャッチした牧原大成【写真:矢口亨】
中堅へ抜けそうな打球をスライディングキャッチした牧原大成【写真:矢口亨】

1-0の8回に飛び出したビッグプレー

 安打になることはわかっていた。「アウトにしようとは思っていなかったですね」。勝敗を分けた好守を見せた試合後、牧原大成内野手は淡々と語った。「当たり前にできないといけないことなので」。その言葉には、プロとしての矜持が滲み出ていた。

 1日の首位・日本ハムとのカード初戦。エース・有原航平投手と北山亘基投手の投手戦は、6回に中村晃外野手の犠飛でホークスが先制した。ビッグプレーが生まれたのは、わずか1点のリードで迎えた8回2死二塁の場面。この回から二塁の守備についた牧原大は、田宮裕涼捕手の中堅へ抜けそうな打球をスライディングキャッチ。内野安打になったものの、有原が後続の清宮幸太郎内野手を一ゴロに仕留め、無失点で切り抜けた。

 6月29日のロッテ戦(ZOZOマリン)では、5年ぶりに右翼でスタメン出場した32歳。その起用は、当日に伝えられていたという。スタメンでなくともにじむ信頼。牧原大の凄みは、捕球直後の判断にも現れていた。首脳陣が明かしたリアルな評価とは――。

「大きかったね。あれが抜けていたら、(本塁へ)回されていたからね」

 手放しで称えたのは奈良原浩ヘッドコーチだった。小久保裕紀監督は「点が入りそうで入らない展開だったので。とりあえず守備を変えておこうと」と起用の意図を説明していたが、まさにその采配が的中した形となった。奈良原コーチは「球際の強さが彼の持ち味。そういうところを信頼しているから出している」と語った。

本多コーチが評価した判断力「あそこでしっかり…」

 続けて、本多コーチが高く評価したのは、プレー後の判断力だった。体勢を崩しながらも、一塁には目もくれず、即座に三塁へ送球。アウトにはならなかったが、一塁でアウトにできる可能性がないと瞬時に判断し、二走が三塁を回った動きを見逃さなかった視野の広さは、準備の賜物だった。

「あそこでしっかりキャッチをして、三塁に投げるってところがね。野球勘がしっかりしているところ」と本多コーチ。「もう少ししっかり投げて欲しいですけど」。そう最後に注文つけたのも、牧原大への期待値が高いからだろう。

 新戦力も台頭し、6月は月間打率.333と好調を維持しながらも、ベンチスタートの日もあった。それでも「準備してるからできる」「出ているところでしっかり結果を出したい」。そう言い切る男の、ブレない姿勢と準備の積み重ねが、勝利を引き寄せたひとつのプレーにつながった。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)