小久保監督が絶賛「2軍に落ちる前とは別人」
2軍で過ごした1か月半もの日々を経て「別人」となって帰ってきた。かつての師匠が代弁したのは、明確な変化。そして「優しすぎる」という言葉の真意だ。ソフトバンクの津森宥紀投手はここまで13試合に登板して1勝1敗2ホールド、防御率3.46。6月20日の阪神戦(甲子園)では、1点リードの延長10回に登板し、今季初セーブを記録した。
プロ6年目の今季は開幕1軍を掴んだものの、5月1日に出場選手登録を抹消された。今だからこそ「春先は変化球ばかりを磨いていたのもあって、真っすぐの出力も落ちていたのかなって思います」と冷静に分析できる。6月19日に再昇格を果たすと、球威は明らかに増していた。小久保裕紀監督も「2軍に落ちる前とは別人ですね。全然違う姿」と唸るほどだ。
昨シーズンまで通算214試合に登板。順調にキャリアを積んできた右腕にとって、久々のファーム生活となった。1か月半を振り返り、「全く腐らなかったです」と即答する。その姿に、目を細める人物がいた。
「自分が選手だったころ、一緒に自主トレをしていた時よりも自覚が出てきています。自分の立場もわかっているし、そういうところで『やらないといけない』っていう気持ちはものすごく感じます」
声の主は、奥村政稔3軍投手コーチだ。現在DeNAに所属している森唯斗投手のもとで、津森と自主トレをともにした関係性。ファームを巡回する中で、右腕とコミュニケーションを取る機会は何度もあった。「練習を見ていても『変わったな』って思いますよ」。津森の若手時代を知るからこそ、明確な変化を感じ取ることができた。
「僕と一緒に自主トレをしていた時は、本当に走れなかったんですよ」。津森本人もランニングが得意ではないことは認めていた。昨オフはロッテ・益田直也投手のもとでトレーニングし、「想像以上にキツかった」と語るほどの走り込みを重ねてきた。奥村コーチは「今のツモはチームのランニングメニューとは別に、自分で追加して走っている姿も見かけます。意識はすごく上がっていると思います」。選手に対して厳しい姿勢を貫く熱い男が、心からの“褒め言葉”を口にした。
津森の変化を奥村コーチが語る…「自覚が」
DeNA・森唯は誰よりも兄貴肌で後輩の面倒を見てくれた。その背中を追いかけてきた津森も、大津亮介投手や岩井俊介投手らの動向を常に気にかけている。先輩としての自覚が出てきた一方で、奥村コーチは「優しすぎるんです」と“注文”をつけた。もう1つ上のステージに行くための大切な意識だ。
「面倒見は確かにいいと思います。その上で津森が、ちゃんとやっていない選手を注意できるようになったら、もっといいと思います。言葉にすると、自分でも『やらなあかん』って思うじゃないですか。そこまではなり切れていないのかなと。優しいので、(後輩も)ついてきちゃうんです。『ここは違うぞ』、『俺も今真剣にやっているし、お前も大事なところなんやけん、馴れ合いよる場合じゃない』ってところまで言えるようになってくれたら」
柳町達外野手らと同学年で、来年1月に28歳を迎える世代。筑後にいれば、周囲のほとんどは後輩だった。津森も「あんまり意識はなかったですけどね。自分のやることはしっかりやっておきたかった」と自らの調整に集中していた。奥村コーチの存在についても「もとから仲良くしていただいていたのもあるし、選手を明るくしてくれた。やりやすい状況をいつも作ってくれました」と感謝した。1軍で結果を出し続け、さらなる高みを求めていきたい。
5月1日に2軍降格…「悔しい気持ちでしたけど」
「2軍に落ちた時は悔しい気持ちでしたけど、逆に新しい自分を見つけられた感じがよかったです。絶対に1軍でやりたい。その思いだけで、ファームではやってきた。マイナスに考えてもいいことはないし、早く戻るぞと思って取り組んでいました」
パ・リーグ連覇、日本一という目標のためにブルペンを支え続ける。変化を続ける津森の姿は、必ず後輩たちのいいお手本になるはずだ。
(竹村岳 / Gaku Takemura)