【単独インタ】サファテが語る“守護神” オスナらに金言も…鷹ファンは「親切です」

2023年に来日したデニス・サファテ氏【写真:荒川祐史】
2023年に来日したデニス・サファテ氏【写真:荒川祐史】

「キング・オブ・クローザー」が語る重圧とやりがい

 鷹フルでは、元ホークスでNPB通算234セーブを挙げたデニス・サファテ氏を単独インタビューしました。「キング・オブ・クローザー」と呼ばれた右腕。チームリーダーとして心掛けていたこと、そして自らが打ち立てた大記録――。守護神という言葉を、さまざまな視点から紐解いていきます。またロベルト・オスナ投手や、今「日替わり」でクローザーを託されている後輩たちにも言及しました。

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 画面の向こうに、今も変わらない精悍な顔つきのサファテ氏がいた。現役引退から4年。豊かに蓄えた髭をなでながら、オンライン取材に応じてくれた。クローザーとして登板する瞬間の心境を尋ねると、懐かしむように語り始めた。

「アドレナリンが一気に出る感覚でした。44歳になった今でも恋しく思う出来事ですね。あのフィールドに向かっていく感覚を再現できるものは他にはありません」。その興奮は、代え難い大切な“刺激”として今でも胸に刻まれている。

 2014年にホークスへ入団すると、翌年から3年連続でセーブ王に輝き、2017年にはシーズン54セーブというNPB記録を樹立した。「先発投手はもちろんですが、リリーフ投手も同じくらい重要です。いい抑え投手がいなければ9回が非常に危うくなってしまい、多くの試合を落としかねない。白星を重ねるためにも、いいクローザーはチームに必要です」。自身の経験を交え、力強くその重要性を説く。サファテ氏にとって“守護神”とは、どんなポジションだったのだろうか。

「自分の仕事ができるかどうか。それは簡単なことではありません。抑え投手は常に試合に出るわけではなく、座りながら戦況を見守っているからです。マウンドに上がって自分の仕事ができれば素晴らしいことですが、失敗すれば何も仕事をしなかったことになる。大きなプレッシャーがかかりますが、私はその状況を楽しんでいましたね」

 登板機会が限られるからこそ、重圧は計り知れない。僅差のセーブシチュエーションでマウンドに上がる、独特の緊張感。それこそがクローザーだけが味わえる“特権”だという。本拠地の大声援はもちろん力になったが、それ以上に「敵地で投げることが楽しみでした。観客のほとんどが相手チームの応援をする中で3つのアウトを奪い、試合を締めくくりたかった」と笑顔で振り返る。特に仙台での楽天戦は強いアウェーの雰囲気を感じていたといい「イーグルスを倒すことが私の楽しみでした」と語った。

森唯斗ら当時の同僚は「こう言うと思いますよ」

 DeNAの森唯斗投手、オリックスの岩嵜翔投手、そして元ホークスの嘉弥真新也氏ら、多くの仲間とブルペンを支えあった。後輩をディナーへ誘うなど、自らが中心となり絆を深める中で、伝え続けたことがある。「野球への姿勢を確立してほしかった。『選手としてまだまだ足りない、もっとできる』という考え方にするためです。そして何より、私たちは1人の人間であり、時には失敗することをわかってもらうためでもありました」。その情熱は、強いホークスを築くという一点に向けられていた。

「一生懸命プレーし、ベストを尽くす。野球を仕事にすることで、たくさん稼ぐこともできる。時には、自分自身にプレッシャーをかけすぎることもありましたが、大切なのは楽しむことです。彼ら(当時のチームメート)も、こう言うと思いますよ。『とてもリラックスした救援陣だった』と。ジョークを言ったりして楽しんでいましたから。ずっと真剣な表情で試合を見つめるような空気ではなかった。私としては、知っていることを教えたり、支えたりしようとしただけ。お互いが最高の姿でいられように切磋琢磨していました」

鷹フルのオンライン取材に応じたデニス・サファテ氏【写真:スクリーンショット】
鷹フルのオンライン取材に応じたデニス・サファテ氏【写真:スクリーンショット】

 54セーブすら記憶に新しいと思えるほど、圧倒的な成績を残した。2017年から8年が過ぎた今も、サファテ氏の姿を現在の守護神に重ねるファンも少なくないだろう。「私が基準を作った? そうだとしたら、嬉しく思います。日本で過ごした時間の中で費やしてきたあらゆる努力を、ファンの方々が評価してくれているということですから」と謙虚に語る。

 今のホークスは、オスナが19日に出場選手登録を抹消。25試合に登板して3勝1敗8セーブ、防御率4.32と本来の姿にはほど遠い成績で、杉山一樹投手や藤井皓哉投手らが“日替わり”で9回を締めるなど、新たな形を探している。

今のホークスは「日替わり守護神」サファテが思うことは?

 そんな現状を踏まえて、サファテ氏はこう話す。「オスナに対しても、ファンの方々は私が残したような活躍を期待しているのでしょう。ホークスファンは毎年、チームが勝つことを期待していますから」。そして、セーブシチュエーションにしかない重圧は「選手が成長する上で必ず助けになる」と断言する。数々の修羅場をくぐり抜けてきた男の確信がこもっていた。

「プレッシャーはあるかもしれませんが、それはもっといい選手になりたいという気持ちにさせてくれる。私の場合はそうでした。自分の中でベストを尽くして、リーグで最高の選手になろうといつも努力をしていた。もし私がいい選手ではなかったら、森、嘉弥真、岩嵜らが私の仕事(守護神)を担っていたでしょう。常に、よりいい選手になろうとした結果、私がスタンダードを定めたのかもしれません」

 今でもホークスの動向は、気になって仕方がないというサファテ氏。「守護神という役割は簡単ではありません。でも、ホークスファンは親切で、忠実です。とにかく勝利を求めている」。3度の日本一に貢献した“キング・オブ・クローザー”の言葉には、確かな重みがあった。

(竹村岳 / Gaku Takemura)