2番・野村勇に代打・近藤→決勝適時打
迷いなき決断が、勝利をもぎ取った。同点の8回無死一、三塁で“最強カード”を切った。代打・近藤健介外野手が右前適時打を放って勝ち越すと、その後、山川穂高内野手が10号満塁本塁打。試合を決定づけるビッグイニングとなった。
27日にZOZOマリンスタジアムで行われたロッテ戦はリバン・モイネロ投手と、種市篤暉投手の投手戦だった。1-1の同点で迎えた7回には2死一、三塁のチャンス。小久保裕紀監督が立ち上がることはなく、8番の海野隆司捕手をそのまま打席に立たせた。近藤がベンチに控える中、この場面では“温存”を選択したのだ。
結果的には8回にさらなるチャンスを作り、2番の野村勇内野手に対して背番号3を送り出した。ベンチの我慢、そして勝負勘が的中した形だ。試合後、小久保監督は「まぁ歩かされても次、(3番の柳町)達なので」と起用の理由を説明した。ズバリ的中したタクト。首脳陣と近藤本人が裏側を語った。
「あれは監督の判断。“あそこで行く”っていうのが的確だった」
そう語ったのは奈良原浩ヘッドコーチだった。近藤は左足かかとを痛め、18日の広島戦(マツダ)から5試合連続で欠場していた。この日も試合前から小久保監督は代打起用を明言。NPB最強打者というカードを切るには、簡単に歩かされて後続が凡退することは避けたかった。「勝負どころって監督が思ったということだよね」。奈良原コーチも、指揮官の判断に異論はなかった。
近藤はヒーローインタビューで「おいしい場面をいただこうと打席に立ちました」と笑顔を見せた。代打を伝えられたのは8回に入る時。「ランナー二塁以上になったら、と言われました」とタイミングを明かす。
代打起用に応えた近藤健介【動画:パーソル パ・リーグTV】
慣れない代打起用にも、近藤の中で“勝負どころ”への準備は整っていた。イメージは「1打席目に立つつもり」。5回を終え、グラウンド整備中にはベンチ前に1人アップを行い、体の状態を確認していた。7回にもチャンスはあったが、「展開的にまだ早いと思っていました」と冷静に読み、出番を逆算していた。
チームは柳田悠岐外野手、今宮健太内野手らが戦線離脱し、近藤も腰の手術を行うなど、開幕から“万全”ではない状態。そんな状況で、小久保監督は試合前に語っていた。「(主力が)いない時は、切ったり貼ったり。仕事的には多いけど、楽しいは楽しい。理想は理想として現実どうするか」。まさに采配が、勝敗を分けた一試合だった。
(川村虎大 / Kodai Kawamura)