交流戦Vも苦悩の期間…栗原陵矢が渇望するもの 「全然ダメですね」もどかしい胸中

栗原陵矢【写真:栗木一考】
栗原陵矢【写真:栗木一考】

チームは快進撃も…垣間見えるもどかしさ

 短い言葉に、主軸としての自覚と反省が詰まっていた。「まあ、全然ダメですね」。交流戦までの道のりを問われ、飾らずに淡々と語ったのは栗原陵矢内野手だった。

 チームは6年ぶり9度目の日本生命セ・パ交流戦優勝を果たした。MVPを獲得した柳町達外野手や、野村勇内野手らの活躍が光った一方で、栗原にとっては試練の時期だった。ヤクルト戦では今季初めて、不振を理由にスタメンを外れた。最終的には、打率.250、2本塁打、11打点と持ち直したものの、昨季ベストナインとゴールデン・グラブ賞を受賞した28歳には物足りない数字が並ぶ。

 今季は周東佑京内野手とともにチームを引っ張っていく覚悟で臨んだ。ただ、オープン戦期間に脇腹を痛め、開幕に間に合わなかったことが、歯車を狂わせた原因のひとつかもしれない。それでも小久保裕紀監督は、苦しみながらも前を向く背番号24の姿を「投げやりになるような、そういう姿はないですね」と評価する。シーズンは間もなく折り返しを迎える。その中で、栗原が抱える思いは――。

「なんでもいいからヒットです。Hのランプがつくことが1番の、調子が上がってくる要因じゃないですか」

 いたってシンプルな考え方だった。数字の面を見れば、状態が上向きつつあるようにも見えるが「(シーズンの)最初が悪すぎているので、今の状態がいいのかどうかもわからないですね」と首を振る。一切の満足感はない。今はただ“1本のヒット”を渇望している。

 普段からプロセスを大事にする栗原にしては、意外な言葉にも聞こえる。春季キャンプではアーリーワークなどにも積極的に参加し、日々打ち込みは欠かさなかった。シーズンに入っても、試合前の練習を終えるのはいつも一番最後。「ゲームで100%出せる準備をして、臨むことだけしかできない」と、試合に懸ける姿勢は一貫している。

 たとえポテンヒットでも、ボテボテの内野安打でも構わない――。スコアボードに“Hランプ”を灯すことで、気持ちが少し軽くなり、次の打席、次の試合にも“乗っていける”。そんな感覚を今は求めている。

 交流戦を優勝したことで、チームは本来の姿を取り戻しつつある。だからこそ、自らの成績がより際立ってしまう。「本当にチームの一体感はすごくありますし、チーム全員で目の前の1試合を勝つっていうところに集中できていると思います。雰囲気もいいですし、いい状態だと思います」。チームの好調を実感する一方で、個人としてはもどかしさを抱えている。

 指揮官は「栗原の復調なしに優勝はあり得ない」と語るほど信頼を寄せている。だが、栗原は「チームはチーム、個人は個人。任されたところを一生懸命やるだけ。僕たちはそれに対応しながらやっていくだけです」と、淡々と語る。目の前のプレーに集中し、1本のヒットを愚直に追い求めること。それが、結果的にチームを頂点へ導く力になる。プロ11年目の28歳は今、原点に立ち返りながら、自らと向き合っている。

(飯田航平 / Kohei Iida)