柳町達の打撃“開眼”…本人が語る「真意」 交流戦首位打者、思考&技術から紐解く3つの理由

ヒットを放つ柳町達【写真:古川剛伊】
ヒットを放つ柳町達【写真:古川剛伊】

交流戦MVPを獲得「初めてのタイトルなので」

 9度目の交流戦優勝を飾ったホークス。12勝5敗1分けという成績でセ・リーグを圧倒した中で、柳町達外野手が最優秀選手賞(MVP)を獲得した。「大変、光栄に思います。プロ野球生活の中でタイトルは初めてなので、本当に嬉しいです。ちょっとできすぎなくらい、いい成績だったと思います」。受賞会見の後、口にしたのは“打撃開眼”を果たした3つの理由だ。

 昨季までのプロ5年間で通算239安打。6年目の今季に大ブレークを見せている。6月7日のヤクルト戦(神宮)で4安打を放つと、翌8日には規定打席に到達。58試合に出場して打率.342は目下リーグトップだ。交流戦では全18試合に3番打者としてスタメン起用され、打率.397を記録。首位打者に輝き、チームの優勝に大きく貢献した。

 キャリアハイは2022年の89安打、打率.277。今や小久保裕紀監督も「チームを引っ張る選手になっている」というほどの存在だ。これまでもバットコントロールには定評がありながらも、さらに殻を破り、欠かせない戦力になってみせた。柳町自身が挙げるのは3つのポイントだ。

 1つ目は「ずっと言っているんですけど、打つべきボールと、打つべきじゃないボールの選別がしっかりしているなと思います。ある程度ゾーン内にきたら、全部振っちゃっていた感じはするんですけど。それが今シーズンはすごく、いい捉え方をしていると思います」。どんな選手でも、打席の中で全てのコースを追いかけているわけではない。どのコース、球種なら確率高くヒットゾーンに弾き返せるのか。自分自身への“理解度”が高まったことが結果へと繋がっている。

 打席内におけるボールの選別は、数年前から口にしてきた課題でもあった。今年はその技術に磨きがかかっているといい、「簡単に言えばストライクをしっかり振れていて、ボール球をしっかり見逃せていること。それが“真意”というか、一番いいところかなと思います」。34四球を選び、出塁率.444もリーグトップ。これまで以上に落ち着いてピッチャーと相対していることも、好調の大きな要因だ。

出塁率.444もリーグトップ…最大の要因を自己分析

 自主トレ期間中を振り返ると「取り組みが変わったわけではない」という。進化を遂げたのは思考の面だ。「バッティングは“水物”じゃないですけど。今できているからあしたもできるとは限らない」と日々の変化を受け入れながら、準備だけは怠らない。「僕はタイミングだけかなと思います」。どんな時も貫いていることがある。これが2つ目のポイントだった。

「やっぱりタイミングがズレると、どうしても手でスイングを操作してしまう。そこが合っていれば、今まで染み付いてきたスイングがしっかりできている証拠なので。タイミングっていうのが一番、今シーズンは合っているのかなと思います。詰まったりせずに、上手く対応できているんですかね」

柳町達と大関友久【写真:竹村岳】
柳町達と大関友久【写真:竹村岳】

 柳町が挙げた3点目は、相手がセ・リーグだからこそのポイントだ。交流戦は18試合のみで、1カード3試合と限られた対戦。心掛けていたのは、打席の中でよりボールを“見る”ことだった。「リーグ戦よりも見ていくようにしていました。初球からガツンといけるタイプではないんですけど、無理に打ちにいったことで2打席目以降、情報不足になるのは嫌だったので」。直球はどれほどの威力なのか、変化球の曲がりは? 事前に収集していたデータと、打席の印象をすり合わせてきた。

セ・リーグとの対戦だからこそ…首位打者が得た気づき

「1打席目に感じたことを次に生かすためですね。映像で見ていたより、思っていたよりは速いかなとか。この感じだともう少しタイミングを早く取らないと間に合わないな、とか。そういうのをちょっとずつ修正するようにはしていました」。平然とストライクも見送ることができるのも、打席内での落ち着きに磨きがかかっているから。自分自身の技術に自信を抱き始めている何よりの証拠だった。

 打つべき球の“選別”、より重要視するタイミング、そして1打席目を丁寧に過ごすこと。3つの要素が掛け算となり、“打撃開眼”へと繋がった。今後の戦いに向けても「チーム一丸となって頑張っていきたいです。その中で1つのピースじゃないですけど、僕自身もいっぱい打って頑張りたいです」と力を込めた。ここから上位へ浮上していくために、柳町の存在が絶対に欠かせない。

(竹村岳 / Gaku Takemura)