ギリギリだった数日間…体に起きていた異変 今宮健太の胸中「残りの野球人生を考えても…」

今宮健太【写真:古川剛伊】
今宮健太【写真:古川剛伊】

左脇腹痛で離脱、リハビリ再開も「できることを…」

「残りの野球人生を考えても数年なので。この期間の中で考えながらやるしかない」。左脇腹痛で離脱中の今宮健太内野手が胸中を語った。24日、本拠地・みずほPayPayドームを訪れ、トレーニングなどをこなしたが、患部の痛みは依然残っている。「できることを確認しながら進めていく感じです」と、慎重な姿勢を崩さない。

 発症は14日のDeNA戦(みずほPayPayドーム)だった。打席でスイングした際に体勢を崩し、苦悶の表情でバットを手放した。1度は打席に戻ったが、2球後にファウルを打った際に自らベンチへと下がり、途中交代。小久保裕紀監督も「しばらく時間はかかると思います。治療に専念してほしい」と、長期離脱を示唆していた。

 スイングで痛めたように見えたが、違和感は数日前からあったという。「その1日を乗り切ることができれば……」。試合に出続ける責任感と、認めざるを得ない体の変化――。その間で揺れた葛藤を、率直に明かした。

「あの段階で違和感はあったので。だけど、そこの1日を乗り切ることができれば、ごまかしながら、やっていけるんじゃないかなと正直思ったので。そうやって若い時はしのいできた。ただ、今回は言い方が正しいのかわからないですけど、失敗に終わりましたけど。その作戦が。結果として、チームに迷惑かけてしまった」

 年間143試合を常に万全の状態でプレーできる選手はほとんどいない。日々の試合に出場することで蓄積される負荷や、予想外のアクシデント……。プロ野球選手は誰もが痛みと向き合い、ケアや食事管理を徹底することでシーズンを戦い抜いている。ましてや年齢を重ねれば、代謝の低下や抜けきれない疲労によって、怪我のリスクは高まる。

見過ごせぬ体の変化「若い時だったら…」

 今宮自身も7月には34歳を迎え、ベテランの域に差し掛かる。今季は13年連続で遊撃の開幕スタメンを勝ち取ったが、長年そのポジションを守り続けてきた身体への負担は大きい。2019年以降は故障に苦しむシーズンが増え、体の変化も感じるようになった。

「多分、若い時だったら怪我しないんだろうな、と思うこともありますし。だんだん、年々と簡単に怪我するようになったなって思います。疲労とかも影響しているんじゃないですかね。目に見えるものではないので、なんとも言えないですけど。年を重ねていけば、現実的には(怪我をする)パーセンテージも上がると思いますし」

 食事や試合前の準備を変え、過去2年には大きな怪我もなく130試合以上に出場した。一方で、今季はキャンプ中に左ふくらはぎ痛を発症し、戦線離脱。開幕には間に合ったものの、4月末に死球で右前腕を痛めて登録抹消。6月に戦線へ戻ったが、また離脱を余儀なくされた。

「今年はキャンプから出鼻をくじかれましたけど。どうなんですかね……。早々に(1軍に)戻れる気配はないので、準備の部分で考えないといけないのかなと。残りの野球人生を考えても数年なので、この期間の中で考えながらやって、1年、1年をどう過ごしていくのかなっていうところだと思います」

代打で適時打の川瀬は「先読みしていたと思う」

 今宮が離脱している期間、チームでは若手が躍動。野村勇内野手は打率.279、チーム2位の7本塁打をマーク。今宮が負傷した14日の試合では、代打に送られた川瀬晃内野手が2ストライクから左翼線へ適時二塁打を放ち、お立ち台では「今宮さんのことは自分が一番わかっている」と繰り返した。後輩の活躍に感じたのは頼もしさと申し訳なさだった。

「正直、こういう状況っていうのは彼(川瀬)もわかっていたので。なんかあった時に、『もしかしたら代わるだろうな』っていうのは、多分もう先読みしていたと思います。(川瀬)晃がツーストライクで代打に行った中で、結果を残したから良かったですけど。ああいうことは極力避けたいなっていうのはずっと思っていたので、申し訳ないなと思いました」

 世代交代の波が確実に訪れているのは今宮自身も理解している。ただ、このまま終わるわけにはいかない。「1軍に戻ってくるというよりは、まずはしっかりゲームに出られる状態を早めに作りたいなと思っているので。そこだけは考えています」。自分の体と向き合いながら、もう一度、グラウンドで花を咲かせてみせる。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)