“推し部屋”で判明した選手人気…1位だったのは誰? ピンクフルデーの反響を徹底検証

柳田悠岐の「推し部屋」【写真:球団提供】
柳田悠岐の「推し部屋」【写真:球団提供】

合計6か所に設置…絶大な反響を得た“出来事”

 球団の恒例企画「ピンクフルデー」には、どんな思いが込められているでしょうか。鷹フルでは事業統括本部マーケティング本部マーケティング企画部イベント企画課の西岡純さん、広報室広報企画課の竹下和美さんを取材しました。球団初の取り組みとなった「推し部屋」。来場者数でトップを記録した選手とは? また、意外にも高い売り上げを見せた選手も判明。みずほPayPayドームがピンク色に染まった3日間に迫りました。

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 5月16日からの楽天3連戦は「ピンクフルデー」として行われた。2006年に開催された「女子高生デー」に始まり、ユニホームやノベルティの配布、球場内外の装飾や演出を特別仕様にするなど、非日常のエンタメを提供。また、ピンクリボンの啓発活動も継続して実施しており、名称を変えながらホークスを代表するイベントの1つとなった。中でも、今年は球団としても初めての試み「推し部屋」が行われた。「アイドルのポップアップストアで、実際にライブで着た衣装や写真が飾られているところ」から着想を得たという。

 大きな写真とオフショットを並べ、自由に記述ができるメッセージボードも設置。選手が実際に使用した道具も用意した。西岡さんも「コンセプトは『推し活』でした。同じ選手を推す人が集まって共有する、オフ会のような雰囲気を作りたかったんです」と説明する。当初はドーム内のスーパーボックスを装飾し、同様のイベントを行うことも選択肢に入っていたというが「より多くの方に楽しんでもらうために、誰でも入れるドーム外周で展開することになりました」と経緯を明かした。

今季もグッズ売上でトップを走るのは柳田&周東

 推し部屋の“主人”に選ばれたのは柳田悠岐外野手、周東佑京内野手、今宮健太内野手、中村晃外野手、栗原陵矢内野手の5人。1組につき2分。「その選手のグッズを持っていれば入室できる」という“ルール”のもとで5か所の「推し部屋」が展開された中、もっとも人気を誇ったのは誰だったのか。西岡さんが明かす。

「一番多かったのは、中村晃選手でした。2日目の活躍でお立ち台に上がったことも影響を受けました」

 グッズの売上だけでいえば、今季も柳田&周東のツートップが君臨しているという。客足という意味でも数字に直結するかと思いきや、球団目線でも少し予想とは違った結果になった。竹下さんも「2人はやっぱり人気ですから、そちらのファンの方々が強いのかなと思っていました。中村選手はピンクリボン活動も続けてこられましたし、そういった部分も少しずつ根付いてきているんだと思います」と話す。具体的な理由としても「特にあのヒーローインタビューが大きかったです」と挙げた。

「ピンクフルデー」2日目となった5月17日、中村は初回2死一塁からフェンス直撃の適時三塁打を放った。2018年に鳥越裕介氏から「ピンクリボン活動」を引き継いだ背番号7。導かれるような活躍を見せ、お立ち台では「僕自身、乳がんの早期発見であったり、なくなる人が1人でも少なくなるように活動させていただいています。みなさん、ぜひ検診に行って、悲しむ人が1人でも少なくなるように。ぜひご協力お願いします」と呼びかけた。

中村晃の「推し部屋」【写真:球団提供】
中村晃の「推し部屋」【写真:球団提供】
ドーム外周に設置された「推し部屋」【写真:球団提供】
ドーム外周に設置された「推し部屋」【写真:球団提供】

 選手の力強い発言は、球団目線でも大きな影響力を持つという。実際、2日目から中村の「推し部屋」に足を運ぶファンは増加。根強い人気を誇る同僚たちを抑えて、見事に“トップ”の成績へと繋がった。竹下さんも「まさか言及してくださると思わなかった。あのお立ち台での言葉で、ピンクリボン活動や乳がん検診について知ってくださった方も多くいらっしゃったと思います。選手自身の言葉で発信してもらえると、私たちが公式サイトで告知するのとは比べものにならないくらい影響力があります」。深々と感謝していた。

 翌18日の試合前、練習を終えると中村はドーム外周へ。チャリティグッズの手渡し会に参加した。「手渡し権」は事前募集だったが、イベントには多くのファンが集結。中村が「発見が早ければ助かる病気。1人でもそういう人が増えてくれたら」と話せば、竹下さんも「ピンク色のユニホームを着て楽しんでもらいながらも、社会的なテーマについて考えるきっかけになる日であってほしいと思っています」と球団の思いを代弁した。

ドーム外周でファンに呼びかける中村晃【写真:球団提供】
ドーム外周でファンに呼びかける中村晃【写真:球団提供】

柳町ら「キービジュアル」に選出された5選手…そこに意外な人気も

 シーズンを通して行われる球団主導のイベント。そこには、選手たちの「キービジュアル」が必要不可欠だ。人選は、昨シーズン中から始まるという。今年は柳町達外野手をはじめ正木智也外野手、津森宥紀投手、大津亮介投手、川村友斗外野手が選出された。

 人気という面でも、意外な結果が表れた。今でいえば、リーグトップの打率.342を誇る柳町に勢いがあるのかと感じるが、オンラインストアでは「キービジュアルに関連するグッズの売上でいうと、一番だったのは川村選手でした。撮影の時はすごく照れていたんですけど(笑)」と明かす。どんなところに人気が秘められているのか。球団としても発見の連続だ。ちなみに「ビジュアル担当」を自称していた津森は「来年も立候補している」という。

 竹下さん、西岡さんともに「演出やグッズ、グルメなど、各部署が協力していつもと違う特別な雰囲気を作り出せるように。もちろん勝つのが一番ですが、試合の勝敗に関わらず、この日が『楽しかった』という気持ちで帰ってもらえる。そんな日にしたいと思っています」と口を揃えた。忘れられない思い出になるように。ファンの気持ちを大切にして、ホークスの取り組みはこれからも続いていく。

(竹村岳 / Gaku Takemura)