入団直後の診断で“判明”…川口冬弥の性格を徹底分析 大関友久に「ついていったら?」

プロ初登板を果たした川口冬弥【写真:栗木一考】
プロ初登板を果たした川口冬弥【写真:栗木一考】

阪神戦でプロ初登板…笑顔で「楽しかったです!」

 ソフトバンクの川口冬弥投手が21日、阪神戦(甲子園)でプロ初登板を果たした。6回からマウンドに上がり、2三振を奪うなど無失点投球。満点デビューを飾ってみせた。昨年のドラフト会議で育成6位指名を受け、ホークスにやってきた25歳。“運を引き寄せた”オールドルーキーの性格を、あらゆる角度から紐解いてく。明らかとなったのは、昨年冬の意外な事実だ。「大関くんについていったら?」。

 東海大菅生高、城西国際大時代は公式戦登板の経験がほとんどなかった。社会人野球のクラブチーム・ハナマウイではフォーム改造に取り組む一方で、日中は介護職に勤しんだ。必死に努力を重ねる姿は80代、90代の施設利用者も目にしていたという。ドラフト指名を受けた後、あいさつのためにハナマウイへ行くと「泣いて喜んでくれた人もいました」。自分にとっては通過点だったが、恩返しができた瞬間でもあった。周囲から応援してもらえたのも、右腕が絶対に夢を諦めなかったからだ。

 5月12日、トレードで巨人から秋広優人内野手と大江竜聖投手が加入。支配下枠は1つ減り、残り3枠となっていた。「自分にはどうすることもできない。マウンドで最高のピッチングをするために練習する。その繰り返しです」。足元を見つめていたのも川口らしい。隣を見ればライバルばかり。そんな環境の中、自然体を貫けたのは理由がある。ある日の筑後。サウナでの出来事を口にした。

「この前、読んだ本に『運を引き寄せるにはライバルも応援できるようにならないと』『その結果、ライバルに先をいかれても自分が超えていく壁は高くなる』って書いてありました。だからライバルがいい結果を出しても『ナイスピッチング』って言えるように。僕、こんな感じじゃないですか? 普段通り接していたのはあると思います」

 マウンドを降りれば、おっとりとした性格は自他ともに認めるところ。枠を争う中でも、ライバルの結果に一喜一憂することなく、自分なりに鼓舞してきたつもりだった。

 川口の性格にまつわる意外なエピソードを、大関友久投手も明かしていた。筑後で顔を合わせればコミュニケーションを取り合い、距離感も近づいていった2人。共通点は“入団直後”からあったというのだから驚きだ。

入団前に行われる“性格診断”…大関と川口の共通点

「ホークスは選手1人1人が、性格診断をするんです。こういう考えの人は、こういう傾向があるっていう分析みたいな。僕もしたことがあるんですけど、(周東)佑京さんと考え方が似ていると言われたんです。『すごくいい考え方をしていると思う。周東くんもそんな感じだったんだよ』って。川口がなんて言われたのかわからないんですけど『大関くんについていったら?』って言われたみたいで。腑に落ちたのか、よく(話を)聞いてくれるようになりました」

 そう語った大関。ストイックな性格の左腕は今、心理学に重点を置きながら自分の投球を磨こうとしている。大関の方からも、川口が持つフィジカル面の知識について耳を傾けるといい「一野球選手としても楽しみだなって思っていました。すごく順調なステップを踏んでいるんじゃないですか?」。2軍での登板も気にかけながら見守っていた。

プロ初三振を奪った川口冬弥【写真:栗木一考】
プロ初三振を奪った川口冬弥【写真:栗木一考】

 アマチュア時代から、まさに“努力の人”だった川口。その姿には板東も「ストライクすら入らない時期の映像も見せてもらいました。最初は『ただすごいやつ』って思っていたんですけど、自分で積み上げてきたものがある。並大抵のことではない」と驚きを隠さなかった。筑後ではいつもキャッチボールをする2人。2桁の背番号を勝ち取り、川口からすぐに連絡をしたという。「支配下になってやることありますか?」。板東の答えがまた、進むべき道を教えてくれた。

「『やってきたことを信じてこれからもやっていこう』『自分の目指すところに対して、コツコツやっていく姿勢は変わらない』と言ってもらいました。報告したら喜んでくれたので、自分も嬉しかったです」

同僚の証言は球団の“耳”にまで届いていた

 ウエスタン・リーグでは16試合に登板して0勝0敗3セーブ、防御率0.98。三笠杉彦GMは「ストライク率や、空振りの多さ。2軍にいる支配下の選手と比べても、しっかりと成績を残していた」と、昇格の理由を語った。評価した点は「あくまでも試合でのパフォーマンス。1軍で活躍してくれるという期待です」とキッパリ。そのうえで大関や板東らの“証言”についても聞くと、「そういう話も確かに聞いていました」。球団の“耳”にまで、川口の人間性に関する話が届いていたのも事実だった。

 プロ初登板を終え「楽しかったです! これとこれっていう意識するポイントだけ決めて、思ったよりも落ち着いて投げられました」と笑顔を見せた。いつも謙虚で、目標を見失うことなく努力を重ねる。諦めなければプロのマウンドに立てると、川口冬弥が証明した。

(竹村岳 / Gaku Takemura)