今宮&栗原はできる…今の若鷹に欠けている“価値観” 8点差で虚しく響いたコーチの声

試合後に整列するソフトバンク2軍【写真:竹村岳】
試合後に整列するソフトバンク2軍【写真:竹村岳】

8点差で大敗…安徳駿&水口創太が2軍戦で初登板した経緯

 首脳陣の声だけが虚しく響く。そんなシーンだった。ソフトバンクの2軍は18日、ウエスタン・リーグのオリックス戦(タマスタ筑後)に1-9で大敗。若鷹たちの現在地を象徴するような光景があった。

 序盤から投手陣が8四死球と乱れた。この日先発の岩崎峻典投手は2回3失点。2軍戦では初登板となった2番手の安徳駿投手、3番手の水口創太投手も、ともに3失点を喫し、打線も6安打1得点と精彩を欠いた。

 試合後、松山秀明2軍監督は野手陣にも苦言を呈した。選手の成長を促すファームだからこそ、見過ごせなかった点がある。本拠地開催では、必ず行われる試合後のミーティング。1軍選手との違いは何か――。今宮健太内野手や栗原陵矢内野手にできて、今の若鷹たちにできない明確な点を挙げた。指揮官が伝えたのは、投手が“独り”になってしまっていたことだ。

「ピッチャーをサポートしたり、声をかけたり、そういうことができる選手にならないと。ホークスはそれができるチーム。(今宮)健太、栗原、川瀬(晃)もそうだし、マウンドに歩み寄って、助けようとする野手が多いじゃないですか。きょうなんかは、そういう姿があまり見えなかった。ピッチャーが苦しんでいる時に、野手がどうするのかは、僕らもベンチで見ているわけなので」

 松山監督は、1軍での指導経験も豊富。「内野守備走塁」が管轄だったからこそ、今宮らがどのようにして、投手陣に対してアプローチをしていたのかもよく知っている。「ホークスの本当にいい伝統じゃないですか。継承していけるように、僕らもやっていかないといけないですよね」と自らにも言い聞かせる。初回に二塁の庄子雄大内野手が声をかける場面はあったが、点差が開いたこともあり、その後は続かない。浮き彫りになった若鷹たちの課題だった。

初回1死二塁でライナーを弾いてしまったプレー

 課題は声かけだけではない。プレーで投手を助ける意識も問われた。

「井上(朋也)もあの打球を捕っていれば、ピッチャーは立て直せていたかもしれない(初回1死二塁の左翼守備でライナーを捕球できず)。エラーをしないのはもちろんですけど、その前にもっと大切なことがある。引きずる必要はないけど、責任を感じなければ成長は止まってしまう」

追加点を献上した後、マウンドに戻る岩井俊介【写真:竹村岳】
追加点を献上した後、マウンドに戻る岩井俊介【写真:竹村岳】

 1軍を目指す若手にとって、個人の結果は重要だ。隣にいる選手は昇格を争うライバルでもある。だが、指揮官は「自分のことで精いっぱい。自分のことだけやっておけばいいという考えでは、いい選手にはなれない」と断言する。「ピッチャーが守りのメインですよ? そこに対してどれだけ裏方になって必死に助けられるか。その気持ちがないといい守備ができるはずがないんです」と続けた。

印象的だった終盤の攻撃…声を張り上げたのは

 その“余裕のなさ”を象徴していたのが、終盤の攻撃前の場面だ。守備を終えて一塁ベンチへと引き揚げてくるナイン。8点差を追う展開で、ベンチから「さあ行こうか!」と声を張り上げたのは、選手ではなく村松有人打撃コーチだった。

「そういったところですよね。監督もミーティングでおっしゃっていたことです。僕らもやることですけど、きょうはいっぱいいっぱいだったんだと思います」。若鷹を鼓舞することも指導者の役割とはいえ、選手が自立している1軍では見慣れない光景だった。

 最後に松山監督が若鷹に求めるものを語った。「技術はすぐにうまくならない。でも、試合の中で変化させることはできる。そこの価値観はもう少し持たないといけない」。ゲームセットの瞬間まで、チームの一員として何をするべきか――。この日の大敗は、若鷹たちに根本的な問いを突きつけた。

(竹村岳 / Gaku Takemura)