メキシコで交わした会話「俺らあるよね」 浜口遥大と上茶谷大河…2人を繋ぐ意外な縁

浜口遥大【写真:川村虎大】
浜口遥大【写真:川村虎大】

リハビリをこなす浜口が明かした胸中

 意外な存在が、手術する決断を後押しした。4月中旬から下旬にかけて左肘関節クリーニング術と内視鏡下胸椎黄色靭帯骨化切除術を受けた浜口遥大投手は現在、懸命なリハビリをこなしている。

 国が指定する難病・黄色靭帯骨化症が自らの身に降りかかっている可能性があることは、DeNA時代から認識していた。背中の違和感こそあったものの、野球に大きな影響はなかったため、手術のタイミングを探っていた。そんな中で、左肘の状態も思わしくなかったことから、ホークス移籍後もトレーナーや首脳陣、ドクターと話し合いの日々が続いた。

 様々な要素を加味して、最終的にはメスを入れることを決めた。ただ、手術を決断した“要素”の中には、意外なものもあった。2軍調整中に感じたリハビリ組の雰囲気。「合流しても決してマイナスにはならないかなって」。そう思った出来事とは――。

「上茶谷がリハビリ組の雰囲気を良くしているのを、すごく感じたので。時間のかかるリハビリに取り組んでいる人でも、チームで元気にやっている。それが本当に大きいかなと思います。カミチャが残したものですね」

 DeNA時代からのチームメート、上茶谷大河投手の存在だった。浜口は今春キャンプをA組で過ごしたが、開幕前に2軍へ降格。筑後の室内練習場で練習中、常にリハビリ組からは上茶谷の明るい声が響いていた。「自分がリハビリに入っても、ああいう雰囲気でやれるんだったら前向きに頑張れるかなみたいな。外から見てあったんですよね」。手術する方針はもちろん固まっていたものの、左腕の背中を力強く推した出来事だった。

 上茶谷自身も2月に右肘のクリーニング手術を受け、入団して即リハビリ組に加入する形となった。その後、チームは怪我人が相次ぎ、野手では近藤健介外野手、周東佑京内野手、今宮健太内野手らも合流していたが、「ふと気がつくと、いつも上茶谷が誰かと話してる感じで。気がつけば周囲に人が集まっている。あいつすごいなって思いました」。上茶谷がいるなら大丈夫。浜口も安心してリハビリ組に合流することができた。

 また、上茶谷は浜口にとってリハビリの“道標”でもあった。「『この時期に肘のこのあたりが張ったりしていましたよ』とか、『僕の時はそういう感じがありました』とか。色々と話を聞きながらできたので。参考にしながらリハビリを進められたのは大きかった」。上茶谷は当初の予定より早い5月に実戦登板。早期復帰を目指す左腕にとって“お手本”的な存在になっていた。

「覚悟は決まっていた」メキシコで交わした会話

 ともにDeNAからホークスに加入した2人。思えば、2人は不思議な縁で繋がっていた。昨年12月、一緒に参戦していたメキシコでのウインターリーグ中に話していたことがある。互いに薄々と現役ドラフトの可能性には気づいていた。「『(現役ドラフト)あるかもね』『俺らあるよね、全然』みたいな。覚悟は決まっていました」。そんな中、先に電話が来たのは上茶谷だった。

「『現役ドラフト決まりました。ありがとうございました』って言ってきて。『交流戦とかあるし、どうせ会えるやろ』みたいに返したら、2週間後くらいにトレードが決まったんです。カミチャに『よろしく』って言ったら、あいつ何のことか分かってなかった。『俺もトレード決まったから』と伝えたら、『え!?』みたいな感じでしたね。面白いですよね」

 上茶谷自身も「ホークスでの時間と、肘のクリーニング手術では僕の方が先輩ですから。色々教えてやりました」と明るくジョークを交えて話す。浜口はすでに傾斜での投球練習も再開しており、森山良二リハビリ担当コーチ(投手)も「次にリハビリを抜けるのは浜口かな」と期待する。トレードで移籍したからこそ、縁にも恵まれ、手術に踏み切ることができた。ともに1軍の舞台に上がることを目指し、前を向く。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)