なぜ川瀬晃は2球先に代打の準備ができた? 周到な用意の他に…事前に気づいた“異変”

適時二塁打を放った川瀬晃【写真:古川剛伊】
適時二塁打を放った川瀬晃【写真:古川剛伊】

負傷した今宮の代打で出場し、2本の適時打をマーク

 ただの準備だけではなかった。結果が出たのには理由があった。15日のDeNA戦(みずほPayPayドーム)、1点リードの5回2死二塁。左脇腹に違和感を覚えた今宮健太内野手に代わり、2ストライクと追い込まれた中で打席に入った川瀬晃内野手はフルカウントから外角低めのスプリットをうまく拾い、左翼線へ適時二塁打を放った。

 急な代打起用に応えると、続く7回の第2打席でも適時打を放った。2安打2打点の活躍に小久保裕紀監督も「きょうは川瀬に尽きるかなと思います」と絶賛。普段から、代打、代走、守備固めとスタメン以外でも多様な役割をこなすスーパーサブ。「ベンチで目が合ったらいつでもいける準備をしている選手なので。控え選手のお手本」と小久保監督は厚い信頼を口にした。

 この日、川瀬が代打の準備を始めたのは今宮の打席の3球目だったと明かす。今宮が自らベンチに下がったのは、5球目にファウルを放ったタイミング。確かに3球目のツーシームをフルスイングした際に体制を崩し、苦悶の表情を浮かべたが、再び打席に立っていた。にもかかわらず、“2球”早くから準備ができていたのには理由があった。

「スイングでバットを(手から)離した時に何かあるかな、と」。3球目のスイングの違和感、先輩が見せた苦悶の表情で、自らが準備する必要があるとすぐに察した。

代打を告げられる川瀬晃【写真:古川剛伊】
代打を告げられる川瀬晃【写真:古川剛伊】

「2球前」より以前からできていた“心の準備”

 詳細こそ明かさなかったが、打席に入る前から今宮には“異変”があった。そして、川瀬はそれに気がついていた。「詳しくは言えないですけど、見てりゃわかる。見てりゃわかるというか、一緒に過ごしていたらわかるってところですかね。そこまでしか僕からは言えないです」。打席に立つ準備自体は“2球前”。ただ、心の準備はもっと前からできていた。

 この日、何度も口にしたのは「今宮さんのことは自分が1番わかっている」という言葉だった。同じ遊撃のポジションでずっとホークスを引っ張ってきた偉大な存在。同じ大分出身で自主トレも共にしたこともあった。プロ入りからずっと追いかけてきた背中。毎日見ていたからこそ、異変には気付いていた。

 試合後、川瀬は「監督と目が合う前にきょうは動いていました」と笑いながら明かした。どんな時も欠かさない準備、そして今宮を追いかけ続けた川瀬だからこそ、打てた1本の安打だった。

(川村虎大 / Kodai Kawamura)